こんにちは、アプリコットデザインの中村です。今日は、記憶の残り方の話から書いてみます。
いきなりですが、去年の旅行のことを思い出してみてください。
たぶん、着いた日のことと、最終日のことは出てくると思います。着いてすぐ食べたものとか、帰りの道が混んでいたとか。
では、二日目の午後は、何をしていましたか。
ここが、なかなか出てこないんですよね。楽しくなかったわけじゃないんです。ちゃんと過ごしているのに、記憶が残っていない。
心理学に、これを調べた実験があります。意味のつながらない単語をたくさん読み上げて、あとで思い出してもらう。そうすると、みんな、最初のほうに出てきた単語と、最後のほうに出てきた単語を答えます。真ん中が、きれいに抜ける。
最初が残るのを初頭効果、最後が残るのを終末効果と呼びます。
理由も、なんとなく分かる気がします。最初は、まだ頭の中が空いているので、そのまま入る。最後は、まだ耳に残っている。真ん中は、前からも後ろからも押されて、埋もれてしまう。
これは単語の話ではなくて、僕らが受け取るもの全部で起きています。映画も、冒頭と結末は覚えていますよね。会議も、最初に誰が何を言ったかと、終わり際の空気は覚えている。
体験の量と、残る印象は、比例していないんです。
いちばん長い時間は、いちばん残らない
分かりやすいのが、お店です。
たとえば美容室に行ったとします。覚えているのは、ドアを開けたときの第一声と、お会計から外に出るまでのあいだです。
途中の一時間半、切ってもらっている時間が、いちばん長いんですよ。技術も、そこにいちばん入っている。でも、印象を決めているのは、前と後ろだったりする。
とくに、後ろです。
会計を済ませて、ドアの外まで出てきてくれて、一言添えてくれる。三十秒くらいの話です。でも、その三十秒が、その日ぜんぶの記憶に色をつける。
腕がいいのに、なんとなくまた行こうと思えないお店って、たぶんここです。技術は真ん中に入っているので、そもそも記憶に残りにくい。
ページの終わりが、白いままになっている
ホームページも、まったく同じ構造をしています。
上から順番に見ていくと、いちばん上と、いちばん下が残ります。
いちばん上、つまり開いた瞬間の画面。ここは、みんな時間をかけますよね。写真を選んで、言葉を考えて。
問題は、下です。
ページの終わり。ここが白いままになっているサイトが、けっこうあります。会社情報がずらっと並んで、終わり。
読み終えた人は、そこでいちばん気持ちが動いているのに、その状態で放り出されている。
ですから、下には、その人が次に進める一つを置いておきます。相談する、資料を見る、事例をもう一つ見る。どれでもいいんですけど、置いてあるかどうかで、まったく変わります。
メールもそうです。件名が最初で、最後の一文が終わりです。長いメールを書いたときほど、真ん中は読まれていません。だから、いちばん大事なことは、最後の一文に持ってくる。追伸みたいな形で置くと、なぜかそこだけ読まれたりします。
提案書も、表紙と最後のページです。真ん中の三十枚を、いちばん時間をかけて作るんですけど、覚えて帰ってもらえるのは、表紙の一行と、最後に何を言ったか。
最初は、思っているより早い
最初のほうも、もう少し具体的にしておきます。
ホームページだと、開いてから一秒くらいで、だいたい決まると言われています。何が書いてあるかを読む前に、感じのいいサイトかどうかを判断している。
お店ならドアを開けたときの音と、最初の一声。人なら、名乗る前の表情です。
しかも、ここで一度決まると、そのあとが引っ張られます。
最初に感じがいいと思った人が、少し失礼なことを言っても、疲れてるのかな、で流してもらえる。最初にうーんと思われた人が同じことを言うと、やっぱりそういう人だ、になる。
同じ行動なのに、解釈のほうが変わるんですよね。
ですから、最初の数秒に使えるものは、全部使ったほうがいいと思っています。一枚目の写真、最初の一行、電話を取ったときの声。ここはお金の問題じゃなくて、決めてあるかどうかの問題なので。
真ん中は、深く読む人のための場所
ここまで書くと、真ん中はどうでもいいのか、と思われそうなので、そこも書いておきます。
真ん中は、深く読む人のための場所です。
ここは、届く人数だけで考えると、見誤ります。
サイトでいうと、上から下まで読んでくれる人は、そんなに多くありません。でも、読む人はいます。そして、そういう人は、たいてい本気で検討している人です。
つまり、真ん中は、人数は少ないけれど、決める確率が高い人が読んでいる。
だから、真ん中には、細かいことを書いておきます。料金の内訳とか、進め方とか、断っている条件とか。ここを読んで納得した人が、実際に来ます。
最初と最後は、多くの人に届くところ。真ん中は、来る人にしっかり届くところ。役割が違うだけです。
順番を変えるだけで、残るものが変わる
もう一つ、これは今日からできることです。
内容を変えなくても、順番を変えるだけで、残るものが変わります。
たとえば報告のときに、悪い話と良い話が両方あるとします。
悪い話を最後に置くと、その打ち合わせは、悪い話だった、として記憶されます。良い話をしたことは、たぶん残りません。
先に悪い話を出して、そのあとで、どう進めるかを話して終わる。同じ中身なのに、受け取られ方が変わります。
これは、ごまかしているわけじゃないんですよ。言うことは全部言っているので。どちらを覚えて帰ってもらうかを、こちらで決めているだけです。
提案書も同じで、いちばん自信のあるものを真ん中に置くと、埋もれます。作ったものの順番を、一度並べ替えてみる。それだけで変わることは、けっこうあります。
まとめ
人は、最初と最後しか覚えていません。真ん中は、体験の量が多くても、残らないんです。
ですから、最初と最後に何を置くかを、先に決めておく。お店なら見送りの三十秒、打ち合わせなら帰り際の一言、サイトならページのいちばん下。
真ん中は、深く読んでくれる人のために、細かく正直に書いておく。
もし手元にサイトがあるなら、いちばん下までスクロールしてみてください。読み終えた人に、何を渡しているか。ここは、直すのがいちばん簡単な場所でもあります。
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