こんにちは、アプリコットデザインの中村です。今日は、新しい商売を始めるときの順番の話です。
先に言ってしまうと、始める前に、小さく一件売ってみたほうがいいと思っています。準備を完璧にしてから出すより、途中でいいので一度お金をいただくところまで通してみる。そのほうが、あとが楽になります。
僕の場合は、副業のECサイトでした
二十三歳のときに、自分の店を始めました。ただ、その直前まで、会社勤めをしながら副業をしていたんです。
やっていたのはECサイトです。自分で立ち上げて、仕入れて、住んでいたアパートの一室を在庫置き場にしていました。副業が当たり前という時代ではありません。パソコンが得意だったわけでもなく、ホームページを作ったこともありませんでした。売れているサイトを見ながら、見よう見まねで作りました。
それでも、ぼちぼち売れていったんです。
いま振り返ると、この「ぼちぼち売れた」がその後をかなり左右しました。
頭の中の見込みと、一件売れた事実は、別物です
新しいことを始めるとき、たいていは先に計画を作ります。いくらで、何件くらい、どういう人が買ってくれそうか。
これは必要な作業です。ただ、計画の中の数字は、まだ何も起きていない数字でもあります。
実際に一件売れると、そこが変わります。買う人がいるかどうかを机の上で見積もるのと、目の前でひとつ買っていただくのとでは、手元に残るものがまるで違います。売れた理由も、そこまでにかかった手間も、そこで初めて具体的な形になります。
そして、これは気分の話だけではありません。
銀行に持っていく数字が、変わります
店を始めるとき、銀行からお金を借りました。そのときに材料になったのが、副業でやっていたECの実績です。
何もないところから「たぶん、これくらい売れます」と言う。もう一方は「実際に、これくらい売れていました」と言う。同じ数字でも、受け取られる重さがまったく違います。
金額が大きい必要はないと思います。うちの当時の数字も、たいしたものではありませんでした。それでも、その数字は自分が実際に起こした結果なので、根拠として説明できます。見込みは説明できても、証明はできません。
創業の融資でも、新規事業の相談でも、ここは同じだと思います。
もうひとつ、向き不向きが分かります
小さくやってみることには、数字とは別の効用もあります。その仕事を続けられるかどうかが、自分の反応で分かることです。
会社としてなら、見るのは担当者の反応です。問い合わせが来たときに、その人が先に手を伸ばすのか。それとも、後回しになるのか。試作を見せに行くのを、楽しみにしているのか。ここは面談で聞いても出てきません。実際に一件動かすと、態度のほうに出ます。
新しい柱を立てるとき、担当する人がそこを面倒だと感じているなら、事業の筋がよくても続きません。逆に、放っておいても手が動く人がいるなら、多少うまくいかない時期も越えられます。
一件やってみるのは、市場を見るためでもありますが、誰がこれをやるのかを決めるためでもあると思っています。
新しいサービスを足すときも、同じ順番でやっています
これは独立の話に限りません。うちが新しいサービスを始めるときも、同じ順番でやっています。
資料を整えて、ページを作って、料金表を用意してから世に出す。以前はそうしていました。いまは、先に一件やってみます。知り合いの会社に、まだ名前もついていない状態で相談して、やらせていただく。
そうすると、想定していなかったことが必ず出てきます。手間がかかるのは思っていたところではなかった、とか。喜ばれたのは、こちらが主役だと思っていた部分ではなかった、とか。
その一件を通してから資料を作ると、書ける内容がまったく変わります。先に作った資料は、想像で書いた資料です。
やってみるときの決めごと
小さくやってみる、というときに、うちで決めていることが二つあります。
ひとつめは、無料にしないことです。金額は下げてもいいので、お金をいただくところまで通します。無料だと、相手も気を使って良いことしか言いませんし、こちらも本気の手間をかけません。判断の材料になりません。
ふたつめは、期間を先に切ることです。三か月なら三か月と決めて、そこで一度やめるか続けるかを決めます。決めていないと、なんとなく続いて、なんとなく消えていきます。
順番が逆になると、何が起きるか
もうひとつだけ、独立そのものについて思っていることを書かせてください。
僕は、独立したいから独立したのではありませんでした。商売が面白くてやっていたら、そこに独立という選択肢が出てきた。そういう順番でした。
この順番でよかったと、いまでも思います。独立そのものが目的になっていると、店を開けた日で満足してしまうからです。開店の日は、準備してきたものが形になる、いちばん高揚する日でもあります。ただ、その日の売上で店が続くわけではありません。
新規事業も、たぶん同じです。始めることが目的になっていると、始まった時点で力が抜けます。そのあと何年も続くほうが本番なので。
今日、手元でできること
いま構想している新しいことが、何かひとつはあると思います。
その計画をもう少し詰める前に、いちばん近くにいる方に一件だけ、いまの形のまま持っていってみてください。金額を下げてもいいので、お金をいただくところまで。
僕らがご相談を受けるときも、まずそこを聞きます。一件でも実際にやったことがあるかどうかで、そのあとの打ち合わせの中身が変わってしまうので。
JOURNALが気に入ったら「いいね」してね!



