こんにちは、アプリコットデザインの中村です。今日は、AIとの向き合い方について。結論から言うと、AIに渡していいのは「作る」ところまでで、決めること・聞くこと・決めたあとを一緒に背負うことは人に残ります。そして、浮いた時間を何に使うかで差がつきます。
まず、最近感じていることから。
仕事で何かを作ろうとして、AIに指示を出します。ラフでも、構成でも、文章でもいいです。しばらくして、出てきたものを見ます。
前は、まだまだだな、と言えました。ここが雑だな、これは使えないな、と。でも最近、それが言えない回が増えてきました。悪くない。というより、思ったより良かった。
そのとき、ちょっとざわっとするんですよね。うれしいような、まずいような。
AIで質が上がるのはプロのほう
先に、僕の立場を書いておきます。AIを使うと、プロほど質が上がると思っています。減るのではなくて、上がるほうです。
実際に使っていての実感です。文章はだいぶ前から使っていますし、デザインの構成を考えるときにも使っています。
なぜプロほど上がるのか。指示が具体的だからです。
AIは、いい感じにして、と言っても、いい感じにはなりません。もう少し余白を取って、この行は主語を変えて、写真は人が写っていないほうにして。そう言える人が使うと、三回か四回のやりとりで、かなりのところまで来ます。
言えない人が使うと、何度出し直しても、同じところをぐるぐる回ります。出てきたものが良いのか悪いのかが分からないので、指示のしようがないんですよね。それで、もう一回、と押すことになる。
つまり、AIは、その人が持っているものを速くする道具です。持っていないものは、速くなりません。
浮いた時間で本数を増やすと単価が下がる
目がある人がAIを使いはじめると、作る時間が短くなります。前は十日かかっていたことが、数日で形になる。手を動かす部分が、はっきり速くなります。
ここで、一つ分かれ道があります。空いた時間で、本数を増やすのか。それとも、別のことに使うのか。
本数を増やすほうに行くと、たぶん、単価が下がっていきます。早くできるようになったんだから安くなりますよね、と言われて、断りにくくなる。速さは、そのうち当たり前になるので。
では、別のこととは何か。ここからが本題です。
人に残る仕事は三つある
AIが速くしたのは、作るところだけです。その前と、その後には、人がやらないといけないことが残っています。三つあると思っています。
一つめは、決めることです。
AIは、選択肢をいくらでも出してくれます。十個でも、二十個でも。でも、どれにするかは決めてくれません。正確に言うと、決めてはくれるんですけど、その結果を引き受けてはくれないんですよね。
このデザインで行きましょう、と言った以上、うまくいかなかったときに、その場にいるのは人のほうです。決めるというのは、選ぶことではなくて、引き受けることだと思います。
二つめは、聞くことです。
お客様が困っていることは、たいてい、そのままの言葉では出てきません。ホームページを新しくしたい、とおっしゃる。でも、話を聞いていくと、本当に困っているのは、社内で説明する材料がないことだったりします。
これは、文字にして渡せる情報ではないんですよね。会って、話して、そのときの間とか、言いよどんだところとか、そういうものから見つけていくものなので。AIには、そもそも渡す材料がありません。材料を作るところは、人の仕事のままです。
それに、聞くというのは、質問することだけではありません。答えを急がずに待つとか、話が横道にそれたときに、そのまま聞いておくとか。本当のことは、たいてい、その横道のほうに落ちています。
三つめは、決めたあとを一緒に背負うことです。
作って終わりではなくて、出したあとに直すところが必ず出てきます。思ったほど反応がない、社内から別の意見が出た。そのときに、一緒に考える人がいるかどうか。ここは、道具では埋まらないところだと思います。
最後に効いてくるのは営業力と人間性
この三つを並べてみると、共通しているものがあります。どれも、人と人の間にあるんですよね。
だから、最後に効いてくるのは、営業力と人間性だと思っています。
営業力というと、売り込む力のように聞こえるかもしれません。僕は、そうではないと思っています。相手の話をちゃんと聞いて、必要なことを正直に言って、それで任せてもらえる。これが営業力です。
同じようなものが出せる会社は、これからどんどん増えます。作れることが、選ぶ理由にならなくなる。そうなると、何で選ぶのか。たぶん、その人がどういう人か、です。
約束したことを守るか。都合の悪いことを、先に言ってくれるか。分からないことを、分かったふりをしないか。うまくいかなかったときに、逃げずにその場にいるか。
これは、資格でも実績の数でもないんですよね。何度かやりとりした感じの中に出てしまうものだと思います。前からずっと言われてきたことですが、これまでは、作れるかどうかで差がついていたので、後ろのほうに置かれていました。それが前に出てくる、という話だと思っています。
使わない選択は相手のためにならない
ここで、逆のことも書いておきます。じゃあ、AIは使わないほうがいいのか。逆です。使ったほうがいいと思っています。
使わないでいると、手を動かす部分に時間を取られて、さきほどの三つに使う時間がなくなります。道具を持たない誠実さというのは、相手のためにはならないんですよね。時間をかけたこと自体は、相手には関係がないので。
もう一つ、これは気をつけたいことです。AIが出したものを、自分で見ないまま出す。これは、一番やってはいけないことだと思っています。見ていないものを渡すというのは、判断を渡してしまっているということなので。
僕も使っています。ただ、出す前に必ず自分で見ます。ここは変えていません。作るところは渡していい。判断だけは渡さない。この線だけは、はっきりさせておきたいと思っています。
できることと任せてもらえることは別
それから、これは自分に向けての話でもあります。
AIが使えるようになると、なんでも自分でできる気がしてきます。文章も、絵も、設計も。でも、できることが増えるのと、任せてもらえることが増えるのは、別なんですよね。
任せてもらえるかどうかは、結局、その人と話したときにどう感じたか、で決まっていると思います。できることが増えたときほど、そこを鍛えないといけないのかもしれません。道具が増えると、人と会う時間を減らしてしまいがちなので。
今日、AIに何かを出してもらったら、その中から一つ選んで、なぜそれを選んだのかを一行で言ってみてください。言えたなら、その判断は、自分のものです。
JOURNALが気に入ったら「いいね」してね!



