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COMPANY,SB-WORK 2026.08.09

作る時間が、いちばん短い

WRITER
Nakamura Hiroki クリエイティブディレクター / 代表取締役
Nakamura Hiroki

クリエイティブディレクター / 代表取締役。ブランドマネージャー1級/インターナルブランディング認定コンサルタント/WEBデザイン技能士/WEBマーケティング検定/ネットショップ実務士。

作る時間が、いちばん短い
この記事は、YouTube(音声ラジオ)でも聴けます。作業のおともに、ながらでどうぞ。

こんにちは、アプリコットデザインの中村です。今日は、独立を考えている方に向けて話したことを、会社としての実務の話につなげて書いてみます。

先に結論を書くと、独立して分かったのは、作っている時間が、いちばん短いということでした。

増えたのは、自由ではなかった

僕は独立を三回していて、そのうち二回は続けられなくてやめています。なので成功例としては書けないのですが、やめた側の話はあまり出てこないので、そちらから書いてみます。

独立する前、僕は自由になると思っていました。上司もいないし、やりたい仕事を選べる。時間も自分で決められる。そういうイメージでした。

実際に増えたのは、自由ではありませんでした。決めることの数です。

一回目は二十三歳のとき、犬のセレクトショップを開きました。このとき何をしたかというと、仕入れ先を探して、物件を探して、内装をやって、看板をデザインして、広告を作って、ホームページも自分で作りました。お金がなかったので、内装もホームセンターで資材を買ってきて一人でやりました。

レジ袋も買い物かごも十分に用意しましたし、営業中に釣り銭が足りなくならないよう、両替もたくさんしておきました。

袋のサイズも、釣り銭の額も、看板の文字も、全部自分で決めていたわけです。誰も決めてくれません。そして、決めたことの結果も全部自分に返ってきます。

作る時間は、むしろ減る

もう一つ、これは始める前には分かりませんでした。

一回目のあと、僕はネットショップを始めて、こちらはわりとうまくいきました。注文が一日二十件くらい入るようになって、多い日は五十件を超えることもありました。

そのころの一日は、午前中が受注の対応と仕入れの発注。午後が発送作業。夜にメールマガジンを書いて、そのあとショップの手直しをする。そういう日々でした。

商品を選んだり、写真を撮ったり、キャッチコピーを考えたり。やりたくて始めたはずの仕事は、一日のうちのごく一部だったんです。残りは全部、回すための時間でした。

三回目に会社を作ったときも同じでした。打ち合わせをして、制作をして、そのうえで経理も労務も自分でやっていました。請求書を作って、支払いをして、保険の手続きをして、ハローワークにも行って。これで手一杯になり、あとから経理の人に入ってもらって、ようやく会社らしくなりました。

デザインの仕事がしたくて独立したのに、デザインをしている時間がいちばん短い。

仕事が増えたのではなく、見えるようになった

なぜこうなるのか。今なら分かります。仕事が増えたわけではないんです。

会社にいたときも、請求書は発行されていたし、入金の確認も、保険の手続きも、備品の発注も、全部誰かがやっていました。ただ、僕がやっていなかっただけです。だから、そういう仕事があること自体を知りませんでした。

独立すると、その誰かがいなくなります。仕事が増えたというより、それまで見えていなかった仕事が、急に全部見えるようになる。そういう感覚でした。

これは、制作を依頼する側にも当てはまります

ここからが、会社としての実務の話です。

ホームページやパンフレットを作るとき、多くの方が「作る」ところを仕事の本体だと考えます。デザインして、コーディングして、印刷する。たしかにそこが目に見える部分です。

ですが、実際に成果が変わるのは、その前後にあることが多いんですよね。

前というのは、誰に何を伝えるかを決めるところです。ここが決まっていないまま作り始めると、きれいなものはできますが、誰にも刺さらないものになります。あとというのは、公開してからどう届けるか、数字を見てどう直すか、というところです。

作る時間がいちばん短い、というのは、独立したときの僕の実感であると同時に、制作そのものの構造でもあると思っています。

アプリコットデザインのお見積りに、作る工程だけでなく、その前のヒアリングや設計、公開後のことまで入っているのは、そのためです。作るところだけを切り出して安くすることもできるのですが、それをやると、いちばん成果に効く部分が誰の担当でもなくなってしまいます。

これは、きれいごとで言っているのではなくて、その部分を誰もやってくれない状態を自分で経験したからです。二十三歳のとき、僕は看板も広告もホームページも用意しましたが、誰に何を伝えるかを決めていませんでした。だから、あれだけ準備しても、開店の日に来たお客さんは想像の十分の一にも満たなかったんだと思います。

会社に来ている仕事か、自分に来ている仕事か

最後に、これは独立を考えている方に向けての話ですが、会社としても同じことが言えるので書いておきます。

二回目に独立したとき、僕はデザインの会社で働いていて、少しずつ作れるようになって、自信のようなものが出てきていました。それで独立して、案内を送って、待っていました。

一件も来ませんでした。三か月です。

そのとき初めて、それまで自分のところに来ていた仕事は、会社に来ていた仕事だったんだな、と分かりました。技術の話ではなくて、僕という人間を誰も知らなかった、というだけのことでした。

会社にとっても、これは同じです。問い合わせが来ているとき、それが会社の名前で来ているのか、担当者個人に来ているのか、あるいは検索でたまたま見つかっただけなのか。ここを取り違えると、施策の打ち方を間違えます。

うちが自社のホームページを育て続けているのは、営業して取った仕事より、見つけてもらって来た仕事のほうが長く続くからです。それも、実際にやってみて分かったことでした。

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