こんにちは、アプリコットデザインの中村です。今日は、会社を始めて三年目のころの話を書いてみます。あまりかっこいい話ではありません。毎日「会社を辞めたい」と思っていた時期の話なので。
ただ、この時期に言われた一言が、いまアプリコットデザインがお客様に言いにくいことも言う、というやり方をしている原点になっているので、そこまで含めて書きます。
三年続けることを目標にしていた
会社を作ったとき、僕は「三年続けること」を目標にしていました。三年やると、だんだん知ってもらえて、お客様の数も増えてくる。それは二十三歳でお店をやったときに、体で感じていたことだったからです。
実際、三年目に入ると、お客様の数は増えてきました。目標は一応、達成したことになります。
ただ、中身は全然そんな感じではありませんでした。
言っていることと、やっていることが合っていなかった
そのころ僕が毎日考えていたのは「会社を辞めたい」でした。本当に、念仏みたいに毎日心の中で唱えていました。
理由は、自分で決めたことを、自分で守れていなかったからです。
会社を作るとき、人を大切にする会社にしよう、と決めていました。がんばった分はちゃんと返したい。誕生日にはケーキを買ってお祝いしたい。お菓子とドリンクは自由に。自分が働きたいと思える会社にしたい。そういうことを本気で考えて、制度のようなものも作りました。
でも、現実が追いついていかなかったんです。
仕事はありました。ただ、単価がものすごく安かった。実績のない会社だったので、安くてもいいから受けて実績を作ろう、というやり方で始めていたからです。経費を払って、スタッフに給料を払うと、残りはゼロ。僕の給料が一円も出ない月もありました。
人を大切にすると決めた手前、スタッフに無理な残業はさせたくない。だから、あふれた仕事は全部、夜に自分で片づけていました。
人を大切にする、と言っておきながら、実際にはスタッフに遅くまで働いてもらっていて、給料も上げられないし、賞与も出せない。言っていることと、やっていることが合っていない。それがいちばんしんどかったです。
三百万円借りた直後に「お金がありません」
そこに、決定的なことが起きます。
事務所が大きくなり、人も増え、毎月出ていくお金が増えてきました。心配になった僕は、銀行に三百万円お願いして借りました。給料をもらっていなかった僕にとって、三百万円は大金です。これで安心だと思いました。
そのすぐあとです。経理のスタッフから、こう言われました。
「なかむらさん、お金がありません」
この前借りたばかりなのに、と思って、半信半疑で通帳を見ました。本当に、なかったんです。
血の気が引きました。二十三歳でお店を開いた初日以来の感覚でした。お金がないことをスタッフに気づかれると不安にさせてしまうので、昼間は平然とした顔をして、みんなが帰ってから明け方まで仕事をする。正直に言うと、この時期の記憶はほとんどありません。
「経営者、辞めた方がいいんじゃないですか?」
そういう三年目に、一人のデザイナーが入社してきました。
知り合いの紹介でした。僕より年上で、一人でめちゃくちゃ稼げる人です。マーケティングの知識もあって、プレゼンもうまい。当時の僕から見たら、雲の上のような人でした。
その人が、ズバズバはっきり物を言うタイプで、入社してしばらく経ったころ、こう言われました。
「なかむらさん、経営者、辞めた方がいいんじゃないですか?」
僕は、何も言い返せませんでした。
腹は立ちました。じゃあお前がやれよ、と心の中では思いました。でも、口には出せなかった。というより、出す資格がなかったんです。
その通りだったからです。
もっと正確に言うと、僕自身が同じことを思っていました。経営者が自分じゃないほうが、この会社もスタッフも良くなるんじゃないか。誰にも言っていませんでしたが、毎日考えていたことでした。
それを、外から言われたわけです。
いちばん響く言葉は、知らなかったことではない
ここが、今日いちばん書きたいところです。
人から言われていちばん響く言葉って、知らなかったことじゃないんですよね。うすうす自分でも分かっていたことを、外から言われたときなんです。
知らなかったことを言われても「へえ」で終わります。腹は立たない。勉強になりました、で済む。
でも、自分でも思っていたことを言われると、腹が立つ。図星だからです。
それ以来、僕はこうしています。かちんときたときは、その場では返さないで、いったん持ち帰る。それで、自分の中に同じ考えがなかったかを問い直してみる。あったら、それはたぶん当たっています。
逆に、探しても何も出てこないこともあります。そのときは、単純に相手と見ているものが違うだけなので、そんなに気にしなくていいと思っています。全部を受け止めていたら身が持たないので。
見分けたいのは、その言葉が正しいかどうかではなく、自分がすでに知っていたかどうかです。知っていて、見ないふりをしていたことだけが、あとから響いてきます。
火はついた。ただ、向け先を間違えた
結果的にどうなったかというと、僕はあの一言でかなり火がつきました。
もともと僕は、会社を大きくしたいとか、売上を上げたいという気持ちが本当にありませんでした。今もそんなに強くはありません。でも、負けず嫌いなところがあって、いつかこの人を見返してやる、圧倒的に結果を出してやる、と思ってしまった。そこからエンジンがかかりました。
そのデザイナーは、半年も経たないうちに辞めていきました。見返す相手はいなくなってしまいましたが、今でも本当に感謝しています。あの一言がなかったら、僕はあのまま、会社を辞めたいと唱えながら、だらだら続けていたと思うので。
ただ、ここから先も正直に書いておきます。
火がついた僕は、そこからどんどん人を増やして、売上を伸ばしました。四年目になる前に、スタッフが十人を超えました。
でも五年目に、スタッフが次々と辞めていきました。原因ははっきりしています。無理に会社を成長させたツケです。仕事が増えて、みんな残業しないと回らない。僕自身も忙しくてサポートできず、話す時間も取れない。それでみんな疲れてしまいました。
悔しさで生まれたエネルギー自体は本物だったのですが、その向け先を間違えたんです。見返すために、数字のほうへ走ってしまった。人を大切にする会社にしたい、というほうへ向けていたら、たぶん結果は違ったと思います。
だから、悔しさをバネにしましょう、という話をしたいわけではありません。悔しさは燃料にはなります。かなり強い燃料です。ただ、燃料はどっちに走るかまでは決めてくれない。どこへ向かうかは、頭が冷えているときに自分で決めておかないといけない。それを僕は、五年目にけっこう痛い形で教わりました。
だから、言いにくいことも言います
耳の痛いことを言ってくれる人は、そんなに多くありません。普通は言わないですよね。言ったら関係が気まずくなるので、みんな黙っているほうを選びます。
だから、言ってくれる人がいたとしたら、それはかなり貴重なことだと思っています。その場では腹が立ちますけどね。
アプリコットデザインが、お客様との打ち合わせでたまに言いにくいことを言うのも、たぶんここが原点です。ご要望のとおりに作ることはできます。でも、それでは伝わらないと思ったときには、そう申し上げます。あの時、言われた側にいたので。
あの一言がなかったら、僕は今、言えない側にいた気がします。
もし今、誰かに言われた言葉が引っかかっている方がいたら。褒めてもらった言葉より、腹が立った言葉のほうを、ちょっとだけ思い出してみてもいいかもしれません。その中に、次のヒントが入っていることがあります。僕の場合が、そうだったので。
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