こんにちは、アプリコットデザインの中村です。今日は、ホームページやパンフレットを作るときに、たぶんいちばん多い”ずれ”の話を書きます。
先に結論を書くと、選ばれる理由は、売る側が推したいところとずれていることが多い、ということです。
お店を選んだ決め手は何だったか
ご飯を食べに行こう、というときのことを思い出してみてください。
たぶん検索して、地図を見て、写真を見て、口コミを見て、ここにしよう、と決めますよね。
そのとき、最後の決め手は何だったでしょうか。
料理の写真だった、ということもあります。ただ、けっこうな確率で、違うところで決まっていないでしょうか。駐車場があるかどうか。子どもを連れて行けるかどうか。夜遅くまでやっているかどうか。予約が要るのか、ふらっと行けるのか。
一方で、お店の側は、たいてい料理の写真をいちばん大きく出しています。いちばん自信があるところなので、当然です。
でも、選ぶ側が最後に見ているのは、駐車場だったりする。
この構図が、そのまま自分の会社にも起きています。
売る側に回った瞬間に忘れる
おもしろいのは、これが自分の話になると見えなくなることです。
自分が買う側にいるときは、はっきり分かっています。分かるどころか、自分でやっている。値段でも品質でもないところで決めた経験が、誰にでもあるはずです。
ところが、自分の会社の話になると、いちばん自信のあるところを、いちばん大きく出したくなる。
それは自然なことだと思います。時間もお金もいちばんかけてきたところなので。ただ、選ぶ側が知りたいのは、そこじゃないかもしれません。
ホームページのご相談をいただくときにも、これはよく起きます。技術の話、設備の話、こだわりの話。どれも本当のことなのに、読んだ人が「じゃあうちの場合はどうなんだろう」と思える材料が、どこにも書かれていない。
自分が買うときにやっていることを、そのまま売るときにも思い出せるかどうか。ここがけっこう、差になると思っています。
教材はもう大量に持っている
マーケティングは何から学べばいいですか、と聞かれることがあります。本を読んだほうがいいですか、講座に行ったほうがいいですか、と。
もちろん本も講座もいいのですが、その前にできることがあります。
売る側の経験がない人はいます。でも、買う側の経験がない人はいません。それも何十年もやっている。つまり、教材のほうは、もうすでに大量に持っているんです。ただ、たいていの場合それを見ていないだけで。
たとえば、コンビニでもスーパーでもいいのですが、飲み物の棚の前に立ったとします。
似たようなものが二十本くらい並んでいます。値段もそんなに変わらない。中身も、正直そんなに変わらない。それでも僕らは、その中からちゃんと一本選んで、レジに持っていきます。
なんでそれを選んだんですか、というのを、一回だけ言葉にしてみる。
最初は「なんとなく」しか出てこないと思います。それでいいんです。ただ、その「なんとなく」の中身を、もう一段だけ考えてみる。パッケージの色が好きだったのか。前に飲んだことがあって味を知っていたからか。いちばん手前にあって取りやすかったからか。テレビで見たことがあったからか。
どれも立派な理由です。そして、どれも誰かが仕掛けていることなんですよね。置く場所も、色も、名前も、テレビに出すかどうかも、全部、誰かが決めています。
自分がその仕掛けに乗った瞬間を、自分で観察する。これができるようになると、本を読んだときの入り方が変わります。
使う人と決める人が違うことがある
もう一つ、実務でいちばん外しやすいところを書いておきます。
使う人と、決める人が違うことがある、という話です。
子どものおもちゃがそうですよね。使うのは子どもですが、お金を払うのは親です。子どもがどれだけ欲しがっても、親が「それはちょっと」と言えば買われません。逆に、親が「知育に良さそうだな」と思えば、子どもがそこまで欲しがっていなくても買われることがあります。
贈り物も同じです。使うのは相手ですが、選ぶのは自分です。だからギフト売り場の言葉は、贈る人に向けて書かれています。「喜ばれます」「失礼になりません」。使う人にではなく、選ぶ人に向いている。
ペット用品もそうです。犬や猫は自分で買いませんから。
当たり前の話に聞こえると思うのですが、売る側に回ると、けっこう外します。いちばん使う人のことばかり考えて、実際にお金を出すかどうかを決めている人のことを忘れてしまう。そうすると、言葉が全部ずれます。
BtoBでも同じで、現場で使う方と、稟議を通す方は違うことが多いですよね。現場向けの言葉だけでページを作ると、決める側には何も残りません。
ですから、何かを買うときに、これは誰が使って、誰が決めているんだろう、と一回見てみる。それだけで、自分の仕事のときに気づけるようになります。
比べる相手は同じくらいのところ
ここまでが観察の話です。そのあとにやるといいと思っているのが、比べることです。
さっきの飲み物の棚で言うと、隣に並んでいるものと比べてみる。同じような値段で、同じような中身なのに、片方だけよく売れている。何が違うのか。
これを、自分の仕事でもやってみます。近いところと自分のところを並べて、何が違うかを見る。
このとき一つだけ、思っていることがあります。比べる相手は、憧れているような大きいところではなく、自分と同じくらいのところがいいということです。
大きすぎるところと比べると、違いが多すぎるんです。予算も、人数も、知名度も全部違うので、何を真似ればいいのか分からなくなる。それで「うちには無理だ」で終わってしまいます。
同じくらいのところなら、違いが少ないので、一つひとつが見えます。あそこはこれをやっている、うちはやっていない。そのくらいの粒で出てきます。その粒が、そのまま次にやることになります。
そして最後が、一つだけ変えて、結果を見るということです。
全部いっぺんに変えると、うまくいったときに何が効いたのか分かりません。だから、次に何をすればいいかも分からない。ホームページの改善でも、写真とキャッチコピーと導線を同時に変えてしまって、結局どれが効いたのか分からないまま、というのはよくあります。
本や講座はそのあとでいい
まとめます。
入口は、買う側の自分を見ることだと思っています。なんでそれを選んだのか。なんで人に話したくなったのか。誰が使って、誰が決めているのか。そのうえで、近いところと比べて、一つだけ変えて、結果を見る。
本や講座は、そのあとでいいと思っています。というのも、先に自分の中に「なんでだろう」が溜まっていると、本を読んだときに、あ、これはあのときのことだ、と刺さるからです。逆に、何も溜まっていない状態で読むと、正しいことが書いてあるのに、通り過ぎてしまいます。
もし今日、どこかに買い物に行くことがあったら。一つだけ、なんでこれを選んだんだろう、と考えてみていただけたらと思います。そこから始まることのほうが、実は多いです。
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