情報を発信するなら、反応がある方がうれしいのは当然だと思う。
それはブログだろうとSNSだろうと、動画だろうと同じだ。
私も会社のYouTubeチャンネルを運用するようになってから、再生回数が増えることを素直に喜んでいた。やはり、自分たちがつくったものを誰かに見てもらえるのはとてもうれしい(見ていただいている視聴者のみなさん、ありがとうございます!)
ところが、運用を始めて半年。ある動画の分析結果を見て、少し考えが変わった。
その動画は、普段よりもずっと多く再生されていた。チャンネルとしては、一見するとなかなか良い結果のように思える。
しかし、平均視聴率はわずか5.9%――
この動画は成功だったのだろうか。それとも失敗だったのだろうか。
※平均視聴率とは、動画全体のうち平均してどれくらい見られたかを示す数字。5.9%ということは、仮に10分の動画なら、平均して約35秒しか見られていない計算になる。
入口が広いほど、視聴者の多くは最後まで動画を見ない?
私たちの会社では、ホームページ制作やデザインに関する情報を中心に、起業や働き方についての話などもYouTubeで発信しているが、今回再生回数が伸びたのは「会社を辞めて起業するなら、いつがいい?」というテーマの動画だった。
なぜ、この動画は多くの人に見てもらえたのだろう。
ひとつ考えられるのは、「テーマの間口の広さ」である。
ホームページ制作やデザインの実務に関する話は、どうしても興味を持つ人が限られる。一方で、起業や働き方の話は業種を問わず多くの人が関心を持ちやすい。
つまり、「会社を辞めて起業するなら、いつがいい?」の動画は、それだけ多くの人に「見てみよう」と思ってもらえるテーマだったのだと思う。
ところでこの動画のタイトルを見て、あなたはどういう内容の動画だろうと想像するだろうか。
そのまま率直に「会社を辞めて起業するなら、いつがいい?」→「〇〇の準備ができたら起業すべき!」と、即座に答えが提示される動画だと思って開くのではないだろうか。
しかし実は、実際のこの動画は「会社を辞めて起業するなら、いつがいい?」という問いをタイトルにしていたものの、明確な答えを提示する内容ではなかったのだ。
もちろん、起業のタイミングに正解があるわけではない。だからこそ、経験者の考え方を聞くことにも価値があると思っている。
ただ、タイトルを見て「結局、いつ起業するのがいいの?」という答えを期待した人にとっては、少し物足りない内容だったのかもしれないと、今回の結果を見て私は反省している。
きっと幅広い人に興味を持ってもらえたからこそ、動画に期待するものも人によって違っていたのではないだろうか。それが今回の再生回数と視聴維持率に、結果として現れたのだと思う。
一方、デザインの実務に関する動画は、再生回数こそ控えめだが、比較的長く見てもらえている傾向があると感じる。
こちらはやはりデザイン会社が発信するチャンネルであるから、最初からテーマに関心のある人が集まりやすく、動画の内容も視聴者の期待と一致しやすいのかもしれない。
もちろん、視聴維持率が低かった理由はこれだけではないだろう。
それでも今回の結果から、ひとつ考えさせられたことは事実だ。
多くの人に興味を持ってもらうことと、その期待に応えることは、別の難しさがあるのだ。
では、今回のように再生回数は伸びたものの、視聴維持率が低かった動画は「失敗」だったのだろうか?
最後まで見られなかった動画に、価値はあるのか?
前の章で「結局、いつ起業するのがいいの?」という動画は、再生回数が多い一方で視聴維持率が低くなったと話をしたが、おそらく普段より幅広い層に動画が届くと、こういうことも起こりやすくなるのだと思う。
YouTubeのおすすめなどで露出が増えると、「何の動画だろう?」と、とりあえずクリックする人も増える。そうすると、再生してみたものの「あまり興味のない動画だった」と離れてしまう人も出てくるだろう。
実際、「結局、いつ起業するのがいいの?」の動画はアナリティクスの解析から、今回の動画はYouTubeのおすすめ経由で露出が増え、視聴回数が多くなったとの結果が見えた。
だから、視聴回数だけ増えてしまったことは、それだけで「失敗」だとは、私は判断はしない。
そもそも、会社のことを知らない人に、会社の動画を見てもらうのは簡単ではない。
私たちがYouTubeを運用している目的のひとつは、動画を通じて会社のことを知ってもらい、興味を持ってもらうことだ。その点で考えれば、今回の動画は普段よりも多くの人に届いたという成果がある。
たとえ最後まで見てもらえなかったとしても、動画をきっかけに会社の存在を知ってもらえた可能性はある。
もちろん、そこから別の動画を見てもらったり、会社のホームページを訪れてもらったりしたかどうかは、まだわからないが、今回の動画には、これまで接点のなかった人に知ってもらう「入口」になったかもしれない。その時点で、多くの人に見られた動画にも役割はあるのではないかと思う。
この動画は、成功だったのだろうか?
最初の疑問に戻ろう。
再生回数はほかの動画と比べて10倍以上多いが、平均視聴率は5.9%の動画。
正直なところ、半年間YouTubeを運用してきた今の私には、まだはっきりとした答えは出せないが、多くの人に見てもらえたことは成果だと思う。一方で、せっかく興味を持ってもらえたのに、最後まで見てもらえなかったことには改善の余地がある、というのが事実だろうか。
今回の話を聞いて誤解してもらいたくないのは、今でも再生回数が伸びれば、それはすごくうれしい。その気持ちは変わらない、ということだ。
ただ、再生回数が増えたという結果を、ただ喜ぶだけではなくなった。
なぜ多くの人に見てもらえたのか?
なぜ途中で離れてしまったのか?
分析してみると、次につくる動画で試してみたいことが見えてくるのだ。
だから公開後の数字を見て、改善のための企画を考えて、また動画を制作する。
動画が成功か失敗かと問われたら、私自身が考えて成長するきっかけとなった意味では、この動画も「大成功」であったと思う。
「情報発信室のメモ帳」とは
情報発信室のメモ帳は、情報発信の仕事をする中で見つけた小さな気づきや違和感を綴る連載です。
ブログやSNS、YouTubeの運用を通して考えたことを、メモのように残しています。
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