こんにちは、アプリコットデザインの中村です。ブランディングのお手伝いをするとき、最初の打ち合わせで必ずうかがうことがあります。目標です。これから、どこに向かいたいですか、と。今日はその質問のあとに、僕がもう一つ聞いていることについて書いてみます。
最初に出てくるのは、たいてい数字
この質問をすると、たいてい最初に数字が出てきます。売上を今の倍にしたい。会社の規模を三倍にしたい。これくらいの受注を目指したい。問い合わせを月に何件にしたい。ほとんどの会社がそうです。
これは悪いことではまったくなくて、むしろ、そこがはっきり言えるのはとても強いことだと思っています。数字がないと、進んでいるのか止まっているのかが分からないので。明確な数字を持っているのは、いいことです。
ただ、そこから僕は、もう一つ質問をするようにしています。
「その数字が達成できたら、何が変わるんですか」
少し間があいて、そのあとに本題が出てくる
これを聞くと、少し間があくことが多いんです。そして、そのあとに出てくる話が、たいてい本題になります。
人をもう一人入れたい。今、社長ご自身が現場に出ずっぱりなので、そこから抜けたい。休みが取れるようにしたい。無理な条件の仕事を、断れるようになりたい。スタッフにちゃんと賞与を出したい。この地域で「あそこにお願いしたい」と言われる会社になりたい。
そういう話が出てきます。それを聞いたときに、僕はいつも思うんです。ああ、こっちが本当の目標だな、と。
数字のほうは、それが叶ったかどうかを測るための物差しなんですよね。目的地そのものではない。でも実際に手帳や経営計画書に書かれているのは、たいてい数字のほうだけです。物差しだけが書いてある。
物差しだけを置くと、二つのことが起きる
物差しだけを目標にすると、二つのことが起きると思っています。
一つは、途中がしんどくなること。数字だけを置くと、毎日が「まだ足りていないことの確認」になってしまいます。今月はあと何件足りない。去年より何パーセント低い。がんばっているのに、目に入ってくるのは足りていない数字ばかり。これを続けるのは、正直かなり辛いと思います。意志の強さの問題ではなくて、目標の置き方の問題だと思っています。
もう一つは、達成したときに、思ったより嬉しくないことがある、ということ。数字は達成したのに、社長は前より忙しくなっていて、休みも取れなくて、断りたい仕事も受けたまま。こういうことが実際に起きます。数字だけを目標にすると、数字が増える方向の判断ばかりを積み重ねることになるので、当然といえば当然なんですよね。
数字とセットで、もう一つ決めておく
なので僕は、目標を立てるときに、数字とセットでもう一つ決めておくのがいいと思っています。それが、達成した日の景色です。
その目標が叶っている日の、ふつうの一日を思い浮かべて、言葉にしておく。朝、何時に会社に着いていて、どういう仕事が入っていて、誰がその仕事を担当していて、自分は何をしていて、どんな相談の電話がかかってきて、夕方、何時に家に帰れるのか。そこまでイメージしておく、ということです。
これをやると、いいことが三つあります。
一つめ:途中の判断が、ぶれなくなる
会社をやっていると、日々細かい選択があります。この仕事を受けるかどうか。この人にお願いするかどうか。この設備を入れるかどうか。
そんなときに、数字の目標しか持っていないと、判断の基準が「売上が増えるかどうか」だけになります。そうすると、増えるほうを選び続けることになる。
でも、達成した日の景色を決めていると、基準がもう一つ増えます。「この選択は、あの日の一日に近づくかどうか」という基準です。同じ売上でも、近づくものと遠ざかるものがある。ここが見えるようになるのは、かなり大きいと思います。
二つめ:途中でも、一部分だけ先に手に入る
数字は、達成するまでゼロです。八割まで来ていても、達成ではない。
でも、状態のほうは、今日少しだけ実現できたりします。たとえば「断れるようになりたい」というのが景色の中にあるなら、今日一件だけ、条件を正直に伝えてみることができる。「誰かに任せられる会社になりたい」なら、今日の打ち合わせに一人ついてきてもらうことができる。
小さいのですが、これは前借りではなく、その日の一部が本当に手に入っているんですよね。数字より先に、状態のほうが先に来る。これは、わりとよくあることだと思います。
三つめ:人に伝わる
これが、いちばん大きいかもしれません。
「売上をいくらにする」という目標を朝礼でいくら言われても、スタッフの方からすると、正直、少し他人事です。自分の生活とどうつながるのかが見えないので。
でも、「三年後、こういう働き方になっている」「こういう相談が来る会社になっている」という景色なら、共有できるかもしれません。自分がその中でどう働いているかを、想像できるからです。
同じ目標でも、数字で言うのか、景色で言うのかで、伝わり方は全然違ってきます。これは社内の話でも、お客様への伝え方でも、同じだと思います。
数字がいらない、という話ではありません
誤解のないように書いておきたいのですが、数字がいらない、という話ではないんです。
景色だけがあって数字がないと、今どのあたりにいるのかが分からなくなります。「近づいている気がする」という感覚だけで走ることになるので、これはこれで危ない。
数字は、物差しとして必要です。ただ、物差しを目的地だと思わないほうがいい、ということですね。目的地は景色のほうで、数字はそこまでの距離を測るもの。両方持っておくのがいいと思います。
景色の決め方で、つまずきやすいところ
実際にやってみると、この景色を決めるところで意外とつまずきます。三つだけ書いておきます。
一つめは、つい特別な日を想像してしまうこと。大きな仕事が決まった日。表彰された日。気持ちは分かるのですが、そこはあまり効きません。年に一回しか来ないので。決めておくといいのは、なんでもない平日のほうです。たとえば、火曜日の午前中、自分は何をしているか。そのくらいの解像度がいちばん効いてきます。判断は、特別な日ではなく、ふつうの平日のほうで積み重なっていくので。
二つめは、いつの話にするか。一年後だと、たぶん今の延長でしか考えられません。今の忙しさが前提のまま、少し数字が良くなった一日が出てくる。これを三年後くらいにすると、人が増えている前提や、やめている仕事がある前提で考えられるので、景色がちゃんと見えてきます。だから僕は、三年後くらいで聞くことが多いです。
三つめは、書こうとしても出てこないとき。ここでペンが止まる方は、実際に少なくありません。そういうときは、逆から書くのがおすすめです。「三年後、こうはなっていたくない」という一日のほうを書く。これは、たいていすらすら出てきます。今しんどいことが、そのまま出てくるので。それを一つずつ裏返していくと、なりたい景色のほうが見えてきます。ゼロから理想を考えるより、こちらのほうが早いと思います。
これは、個人の目標でも同じです
ここまで会社の話として書いてきましたが、これはきっと個人でも同じですよね。
たとえば「体重を何キロにする」という目標があったとして、その数字だけだと、途中はずっと我慢の期間になります。でも、「階段を上がっても息が切れない自分になる」「久しぶりに会った人と、気持ちよく写真に写れる自分になる」。そこまで決めておくと、途中でやることが少し変わってきます。
数字を追いかけるのか、その日の自分に近づいていくのか。同じことをやっていても、感じ方はだいぶ違うと思います。
目標の下に、一行だけ書き足してみる
もしよかったら、今持っている目標を一つ選んで、その下に一行だけ書き足してみてください。
その目標が叶っている日、自分は何をしていて、どんな顔をしていますか。
これを書いておくだけで、明日からの判断が、少しだけ楽になるんじゃないかなと思います。
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