こんにちは、アプリコットデザインの中村です。今日は、キャッチコピーの話を書いてみます。
はじめに、占いの話をさせてください。
雑誌でも、テレビでも、アプリでもいいのですが、こういうことを言われたことはありませんか。
あなたは、周りに気を遣いすぎるところがあります。人前では明るく見られますが、一人になると考え込むことがあります。本当はもっと認められたいと思っているのではないですか。
当たっているな、と思った方は多いと思います。でも、よく考えると、これはほぼ全員に当てはまります。気を遣いすぎない人はあまりいませんし、一人になったら誰でも少しは考える。認められたくない人も、ほとんどいません。
心理学では、これをバーナム効果と呼びます。誰にでも当てはまることを言われると、人は、自分のことを言われたと感じる。名前は、昔のアメリカの興行師から来ているそうです。誰が来ても楽しめるものを用意していた人で、その考え方が名前になった。
なぜこうなるかというと、人は、自分に当てはまるところだけを拾うからです。気を遣いすぎる、というところに、あ、そうかも、と引っかかる。その瞬間に「当たった」が決まります。そして、当てはまらないところは飛ばして、忘れる。覚えているのは、当たった部分だけです。
世の中のコピーの半分くらいは、たぶんこれ
ここからが本題です。これ、キャッチコピーにそのまま使えます。
というより、世の中のコピーの半分くらいは、たぶんこれでできています。
あなたらしく、生きる。本当の自分に出会う。心地よい暮らしを、あなたに。
どれも、聞けば、いいことを言っているなと思います。反対する人もいませんし、当てはまらない人もいません。つまり、百点満点で当たっています。
ただ、ここで一つ考えてみてほしいのですが、この一行を見て、問い合わせをしようと思うでしょうか。
たぶん、思わないんですよね。
当たってはいるのですが、その人に向けて言われた気がしないからです。みんなに当てはまる言葉は、みんなに向かって言われていることが、分かってしまう。
占いなら、それでいいと思います。エンターテインメントなので。でも、選んでもらう場面では、そこで止まります。
性格ではなく、場面を書く
じゃあ、どうするか。僕が思っているのは、性格ではなく、場面を書く、ということです。
家を建てる会社のコピーで考えてみます。
理想の暮らしを、かたちに。これは気持ち側の言葉で、全員に当てはまります。
これを、場面にしてみます。
土地は決まったのに、間取りで止まっている。
当てはまる人は、さっきよりぐっと減ります。土地がまだの人には関係がないので。でも、いま本当にそこで止まっている人からすると、なんで知ってるの、になるんですよ。
この差が、決定的だと思っています。
性格や気持ちは、自分でもぼんやりしています。だから、そうかも、で終わる。場面は、事実です。実際にその状況にいる人は、はっきり自覚している。そこを言われると、この人はうちのことを分かっている、に変わります。
もう少し例を出します。
いいものを、丁寧につくります。これは全員に当たる言葉です。作ったのに、問い合わせが増えないままだ。これは、その状態の人にだけ当たる言葉です。
お客様に寄り添う対応。これは全員。三社に見積もりを出したら、全部同じことが書いてあった。これは、いま比べている人にだけ届きます。
当てはまる人数は、明らかに減っています。それでも、僕は後者を選びます。コピーの役目は、たくさんの人にうなずいてもらうことではなくて、その状況にいる人に手を挙げてもらうことなので。
絞ったら来なくなる、のは本当か
ここで、たいてい聞かれることがあります。そんなに絞ったら、他の人が来なくなりませんか、と。
来なくなります。実際、数は減ります。
ただ、減るのは、もともと決めない人なんですよね。
みんなに当てはまる言葉で集めると、問い合わせの数は増えます。でも中身は、とりあえず聞いてみただけ、が多くなる。会って話すと、まだ何も決まっていない。
場面を書いたコピーで来る人は、その場面にいる人です。もう困っていて、動いている。だから話が早いし、決まりやすい。
数が減って、決まる率が上がる。合計で見ると、そのほうが楽なのではないかと思っています。
その言葉は、頭で作らない
では、その場面をどうやって見つけるか。ここが、いちばん大事なところかもしれません。
頭で考えて作らないほうがいいです。
僕らがやっているのは、お客様と話したときに出てきた言葉を、そのまま持ってくる、というやり方です。
打ち合わせで、こういうことを言われることがあります。もう何から手をつけたらいいか分からなくて。前の会社では、聞いても専門用語で返ってきて。
そういう言葉は、書き言葉になっていません。だからコピーとしては、きれいじゃない。でも、同じ状況の人が読むと、いちばん刺さります。実際に誰かの口から出た言葉なので、どこかの誰かが本当に思っていることだからです。
頭の中で作った言葉は、当たり障りがなくなります。人の口から出た言葉には、角が残る。その角が、引っかかりになります。
ですから、コピーを考えるときは、まず、聞いた言葉を思い出すところから始めたほうが早いです。
不安のほうで、当てにいかない
もう一つ、気をつけたいことを書いておきます。
バーナム効果には、悪いほうの使い方があります。不安のほうで当てにいく、というやり方です。
今のままだと、損をしています。気づいていないだけで、実は問題があります。九割の人が、ここで失敗しています。
これも、全員に当たります。損をしていない人はいませんし、気づいていない問題がない人もいない。しかも、良いことを言われるより、こちらのほうが強く反応します。人は、不安のほうに引っ張られるので。
だから、当然のように効いてしまう。ただ、僕らはやりません。
理由は単純で、その言葉で来てくれた人は、不安のまま来ることになるからです。不安で始まった関係は、ずっと不安のまま続きます。ちょっとしたことで、やっぱりだめかも、に戻る。
それと、当たる範囲が広いということは、関係のない人まで不安にさせている、ということでもあります。それは、したくないなと思っています。
五社並べてみると、驚きます
最後に、もう一つだけ。
バーナムに頼りすぎると、全部の会社が同じコピーになります。
一度、自分の地域の同業のサイトを、五社くらい並べて見てみると、たぶん驚きます。ほとんど同じことが書いてあるので。
安心、信頼、寄り添う、お客様第一。どれも当たっていて、どれも同じです。
そのなかで、一社だけ具体的な場面が書いてあったら、そこが目立ちます。いい意味で。
まとめ
誰にでも当てはまることを言われると、人は自分のことだと感じます。占いは、それでできています。
コピーにも同じことが使えますが、そこだけで作ると、全員に当たって、誰にも残らない言葉になります。
だから書くのは、その人がいま置かれている場面です。いつ、どこで、何に詰まっているか。当てはまる人が減っても、そのほうが届きます。
そして、その場面の言葉は、頭で作らずに、実際に誰かが言った一言から拾う。
もし、いま手元にキャッチコピーがあったら、一度だけ見てみてください。それは、性格を言っているのか、場面を言っているのか。
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