こんにちは、アプリコットデザインの中村です。今日は、会社の強みを言葉にするとき、打ち合わせで最初に何を聞いているかの話です。
御社の強みは何ですか。そう聞くと、たいてい話が止まります。しばらくして出てくるのは、品質がいい、信頼、対応が速い。この三つは、どこの会社からも出てきます。答えた方が悪いというより、聞き方のほうに無理があるんだと思います。
強みを言葉にするというと、頭の中を探す作業だと思われがちです。でも言葉は、頭の中より、もう起きた出来事の中にあります。考えるより、思い出す作業に近い。
最初に聞く四つの質問
打ち合わせの最初に、僕が実際に投げている質問はこの四つです。
- 最近ありがとうと言われたのは、いつのどんな場面でしたか
- スタッフの方が、やってよかったと感じた瞬間はどこでしたか
- この人のためならがんばれる、と思ったお客様は誰ですか
- 逆に受けたくない仕事はどんな仕事ですか
どれも強みを聞いていません。聞いているのは、すでに起きた出来事です。
なかでも、ありがとうから入るのには訳があります。お礼を言われた場面は、相手が困っていて、それが解けた場面です。困りごとと解き方と相手の顔が、一度に入っている。「強み」という言葉には、この三つがどれも入っていません。
部品をつくる工場で通してみる
たとえば部品をつくっている工場があるとします。最初に出てくる言葉は「うちの強みは短納期です」。このままだと、同じ市内に同じことを言う会社が三社くらいあります。
そこで聞くのが、ありがとうと言われた場面です。金曜の夕方に図面が変わって、月曜の朝に部品を持っていった。受け取った担当者が、助かった、と言った。こんな場面が出てきたとします。
この場面に「なぜ」を足していきます。
なぜ月曜の朝に間に合ったんですか。材料をいつも少し多めに置いてあるから。なぜ多めに置いてあるんですか。図面は変わるものだと思って、段取りを組んでいるから。なぜそう思うようになったんですか。昔、間に合わなくて、お客様のラインを止めたことがあるから。
三回たずねたところで、言葉が入れ替わります。短納期の工場から、図面が変わる前提で段取りを組んでいる工場へ。この言い方は、その工場にしかできません。
抽象語はその場で具体に割る
なぜを足していると、途中で抽象的な言葉が出てきます。そのときは、その場で具体に割ります。
丁寧にやっています、と言われたら、丁寧というのはどこで何をしていることですか、と聞き返す。納品のときに必ず一度電話をして、前回と変わったところを口で伝えている。ここまで出てくると、丁寧という言葉は要らなくなります。
親身、安心、寄り添う。このあたりの言葉が出たら、僕はいつも一度止まります。悪い言葉ではありませんが、まだ何も言っていない言葉です。
六つの欲求に当てて二つに絞る
場面と理由が出そろったら、名前のついた道具に当てます。僕が使っているのは、人の六つの欲求です。確実性、多様性、重要感、つながり、成長、貢献。人が何かを選ぶとき、その裏で動いている気持ちを六つに分けたものです。
さっきの工場は、まず確実性です。図面が変わっても止まらない。もうひとつ、ラインを止めた記憶から来ているところがあります。相手の現場のことを、自分の心配として持っている。これはつながりです。
確実性とつながり。二つを掛け合わせると、比べられる相手が減ります。三つ以上選ぶと輪郭がぼやけるので、二つで止めます。
よその会社が言えるかで確かめる
最後に一回、検算をします。できた文を、よその会社が言っても成り立つかどうか。
「品質と信頼でお応えします」は、どこの会社でも言えます。「図面が変わる前提で段取りを組んでいます」は、その工場しか言えません。よそでも言えてしまう文は、まだ言葉になりきっていないと考えています。
社内だけで掘ると二回目で止まる
この作業は、社内だけでやると途中で止まりやすいです。自分たちになぜを向けても、二回目あたりで話が終わる。「そういうものだから」で片づいてしまう。自分たちの当たり前は、自分たちからは見えないからです。
ブランディングの仕事をしていて一番よく思うのも、自社のことは自社では分からない、ということです。聞き手は、同じ業界でない人のほうがいい。事情を知らない人ほど、社内では誰も疑わないところで手を止めて、なぜですか、と聞いてくれます。
僕がお客様との時間で最初にやるのは、今でもこれです。強みを考えてもらう代わりに、先月ありがとうと言われた場面を三つほど挙げてもらう。そこから先は、なぜを足していく時間になります。
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