こんにちは、アプリコットデザインの中村です。今日は、認知的不協和という言葉から書いてみます。
ちょっと思い出してみてほしいのですが、そこそこ高い買い物をしたあとに、なぜかまた口コミを読み直したこと、ありませんか。
もう買っているんですよね。返品する気もない。なのに、良い評価のところをわざわざ探して読んでいる。
あれは、何をやっているかというと、自分を安心させています。
心理学で、認知的不協和と呼ばれているものです。言葉は難しいのですが、中身は単純で、自分の中に合わない考えが二つあると、気持ちが悪くなる。それで、どちらかを変えて辻褄を合わせにいく。それだけです。
さっきの買い物でいうと、けっこうな金額を払った、という事実があります。その横に、本当に良かったのかな、という疑いがある。この二つが並んでいると、落ち着かない。だから、良い評価を集めてきて、疑いのほうを小さくしています。
面白いのは、買う前より、買ったあとのほうが熱心に読むことです。
タバコの話も同じだと思います。体に悪いと知っている。でも吸っている。この二つは並べておけないので、うちのじいちゃんは吸ってて長生きした、みたいな理屈が出てくる。
人は、辻褄を合わせる生き物なんですよね。事実を変えられないときは、考えのほうを変えてでも合わせにいく。
今日は、これをホームページでどう使うか、という話を書きます。
値段の辻褄
これがいちばん効きます。
安すぎると、人は逃げます。
たとえば、まわりが十万円くらいのものが、一社だけ三万円だったとします。このとき、お、安いラッキー、とはならないんですよね。何かあるはずだ、と考えます。品質が悪いのか、あとから追加費用が来るのか、続かないんじゃないか、と。
安いという事実と、ちゃんとしていてほしいという期待。この二つの辻褄が合わないので、いちばん簡単な解決策として、この会社はやめておこう、になります。
ですから、安いなら、安い理由を書いたほうがいいと思っています。
自社で全部やっているので中間のマージンがない。営業を置いていない。テンプレートを使って、そのぶんの手間を減らしている。
理由が一行あるだけで、辻褄が合います。合った瞬間に、安さは魅力に変わります。
これは高いときも同じです。高いなら、なぜ高いのかを書く。何が入っていて、他とどこが違うのか。書いていないと、読んだ人は、ただ高い会社、として処理して閉じます。
高いことも安いことも、それ自体は問題じゃないんです。理由が書いていないことが問題なんだと思っています。
言っていることと、やっていることの辻褄
これは、けっこう多いです。
丁寧な対応を心がけています、と書いてあるサイトで、問い合わせフォームを開いたら、入力項目が十個ある。
地域に根ざしています、と書いてあるのに、載っている写真が全部、どこかで見たことのある素材写真。
社員の顔が見える会社です、と書いてあって、社員の写真が一枚もない。
読んだ人は、どちらを信じると思いますか。
言葉のほうじゃないんですよね。目に見えているほうを信じます。そして、言葉のほうを、嘘だったんだな、と処理します。
この処理が起きると、そのページに書いてある他のことまで、まとめて疑われます。一か所の矛盾が、全部を安くしてしまう。
ですから、サイトを作るときは、書いた言葉と、そのページでやっていることが合っているかを見ます。
丁寧と書くなら、フォームの項目を減らす。顔が見えると書くなら、写真を撮りに行く。書けないなら、その言葉を消す。それでいいと思っています。
比べているときに、何を渡しているか
ここで、比べられているときの話をひとつ。
三社で見積もりを取ったとします。だいたい、どこも似たようなことが書いてあるんですよね。実績があって、丁寧で、お客さまの立場で考えます、と。
そうすると、選ぶ側は困ります。全部同じに見えるので、決める理由がない。決めなきゃいけないのに理由がない、というのも、かなり気持ち悪い状態です。
その気持ち悪さを、いちばん手っ取り早く消せるのが、値段なんです。同じに見えるなら、安いほうでいい、となる。
値段で比べられるのがつらい、という話はよく聞きます。原因の半分くらいは、これじゃないかと思っています。比べる材料を、値段しか渡していないので。
うちが向いているのはこういう人です。こういう場合は他をおすすめします。そこまで書いてあると、比べる軸が一本増えます。軸が増えると、そこで選ばれるようになります。
断りたいことを先に書くのは、こわいです。でも、書いた瞬間に、値段の勝負から降りられます。
決めたあとの辻褄
ここが、いちばん忘れられているところだと思っています。
さっきの口コミの話を思い出してください。人は、決めたあとにこそ、不安になります。
問い合わせを送った直後。申し込みボタンを押した直後。あそこが、いちばん揺れています。
なのに、たいていのサイトは、そこで終わります。送信が完了しました、ありがとうございました、以上。
もったいないと思っています。
送信が終わった画面に、この後どうなるかを書いておく。だいたい何日で返事が来るのか。何を準備しておけばいいのか。過去にどんな相談が多いのか。それだけで、押したあとの不安が下がります。
自動で返るメールも同じです。受け付けました、の一行で終わらせずに、担当者の名前と、次の連絡のタイミングを書いておく。
ここを丁寧にやると、キャンセルが減ります。というのも、キャンセルって、たいてい他社と比べて起きるんじゃなくて、決めたあとの不安を放っておかれて起きるので。
そして、これは口コミにも効きます。
人は、自分が良い判断をしたと思いたい生き物です。良い判断だったと思えている人は、人に話します。そのほうが辻褄が合うので。
逆に、不安なまま進んだ人は、何も言いません。悪く言うわけでもなく、ただ黙っている。
小さな「あれ?」と、煽りの線
四つめは、使い方に気をつけたいところです。
見出しで、小さな「あれ?」を作る、という使い方があります。思っていたことと、ちょっと違うことを言う。すると、辻褄が合わないので、続きが気になる。
デザインは盛らないほうがいい、とか。ホームページは作った日がいちばん価値が低い、とか。読んだ人は、え、どういうこと、となって、本文に入ってくれます。
ただ、これは一歩まちがえると、煽りになります。
知らないと損します、とか、九割の会社が間違えています、とか。あの手のやつです。
あれも仕組みとしては同じで、不安と現状のあいだに、無理やり辻褄の合わない状態を作っている。効くには効くんですよ。ただ、作った不安は、あとで戻ってきます。
その気持ちのまま申し込んだ人は、届いたものを見て、思ってたのと違う、となる。返品になるか、クレームになるか、口コミになる。
ですから、僕が使うのは、すでにその人が引っかかっていることを言葉にするところまでです。
ホームページを作ったのに問い合わせが増えない、というのは、その人がもう感じていることですよね。それを言うのは、不安を作ったことにはならない。
作るのか、もともとあるものを言葉にするのか。ここが線だと思っています。
まとめ
人は、自分の中の辻褄が合わないと、決められません。そして決めたあとも、辻褄を合わせようとし続けます。
だから、サイトでやることは二つです。
決める前には、値段の理由と、言葉に見合った中身を置いておく。決めたあとには、選んでよかったと思える材料を置いておく。
とくに、送信が終わったあとの画面は、たぶん今いちばん手が入っていない場所です。
もし手元にサイトがあるなら、一度、自分で問い合わせを送ってみてください。押したあとに何が出てくるか、意外と誰も見ていないので。
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