こんにちは、アプリコットデザインの中村です。今日は、マーケティングの考え方について書いてみます。「追いかけて売り込む」のではなく、「必要になった瞬間に思い出してもらう準備をしておく」という話です。
追いかけるマーケティングは、走り続けないと止まる
マーケティングというと、広告をたくさん出して、キャンペーンで安くして、今すぐ買ってください、と背中を押すイメージがあるかもしれません。お客さんを追いかけて捕まえにいく感覚です。僕自身、昔はそういうものだと思っていました。
でも、追いかけるやり方は、正直けっこう疲れます。広告は出しているあいだは反応がありますが、止めた瞬間に問い合わせが来なくなる。だからまた出す。安くすればその月は売れますが、次の月からはその値段でないと動かなくなる。追いかけ続けないと止まってしまうので、ずっと走り続けることになります。しかも、追いかければ追いかけるほど、相手のほうは一歩引いてしまう。しつこいセールスの電話や、どこまでも追いかけてくるネット広告を思い出してもらえると、早いと思います。売りたい気持ちが前に出るほど、人は身構えるものです。
人は「必要になった瞬間」にしか動かない
ここで、僕がいちばん大事だと思っていることがあります。人が何かを頼むときって、たいてい「必要になった瞬間」があるんです。歯が痛くなって、はじめて歯医者を探す。引っ越しが決まって、はじめて不動産屋を調べる。「会社のロゴを変えたいね」という話が出て、はじめてデザイン会社を探しはじめる。その瞬間は、こちらの都合では起こせません。相手のタイミングでしか来ないんです。
だとすると、勝負は、その瞬間が来たときに「あ、そういえば」と思い出してもらえるかどうか。ロゴの話が出たときに、顔が浮かぶ人がいるかどうか。紹介や口コミも同じで、知り合いに「誰かいい人いない?」と聞かれたときに、パッと名前を挙げてもらえるかどうか。結局は、相手の頭の中に自分がちゃんと残っているか、という話なんですよね。どれだけいい仕事をしていても、その瞬間に思い出してもらえなければ、いないのと同じになってしまう。マーケティングとは、この「思い出してもらえる状態」を地道につくっておくことなのだと思っています。
売り込むためではなく、覚えていてもらうために
では、どうやって思い出してもらう状態をつくるのか。答えはシンプルで、必要になる前から、ふだんに接点を持っておくことです。売り込むためではなく、覚えていてもらうために。僕らが毎日発信をしているのも、正直、これがいちばん大きい理由です。今日読んでくれた人が、今すぐ何かを頼みたいわけではない。それでいいんです。半年後や一年後に、ブランディングやデザインで困ったときに、「そういえば、あの人たちがいたな」と思い出してもらえたら、それでこの発信は役目を果たしている。今日の一本は、明日の売上のためではなく、いつか誰かが困ったときのための種まきに近いんです。
会社で広報や販促を担当している方なら、実感があるかもしれません。SNSを一本出して、すぐ売れたかどうかで一喜一憂すると、しんどくなる。ここで効いてくるのが、物差しを変えることです。「今日売れたか」で測るとつらいけれど、「覚えてもらえる接点が一つ増えたか」で測ると、続ける理由のほうが増えていく。役に立つ話をする、ふだんの様子を見せる、どんな考えで仕事をしているかを伝える。そうやって積み重ねた接点が、必要になった瞬間に「この人たちに聞いてみよう」と、まっさきに思い浮かべてもらえることにつながっていきます。
機能を並べるより、旗を一本立てる
お客様とブランディングをするときも、同じことをお話しします。多くの会社は「どうやって売るか」を先に考えますが、僕らはその前に、「そもそも、この会社は何屋さんとして覚えてもらいたいのか」を一緒に整理します。ここがぼんやりしていると、いくら発信しても記憶に残りません。「あれもできます、これもできます」と言うほど、結局なんの会社だったか思い出せなくなる。逆に、「この分野といえば、あの会社」と一言で覚えてもらえる旗が一本あると、その瞬間が来たときに、まっさきに声がかかる。だから僕らは、機能をたくさん並べるより、覚えてもらえる旗を一本立てることを大事にしています。
準備は、遅れて効いてくる
もう一つ、大切なことがあります。見つけてもらう準備は、すぐには効きません。種をまいてから芽が出るまでには、どうしても時間がかかる。特に、会社どうしの仕事や、値の張るものほど、思い立ってすぐ決めることは少なくて、比べたり、迷ったり、社内で相談したりする時間が長い。だから、一週間発信して問い合わせが来ないからとやめてしまうのが、いちばんもったいない。
いま声をかけてくださるお客様の多くは、ずっと前からうちのことを、どこかで見てくださっていた方だったりします。そのときは何もおっしゃらなかったけれど、必要になった瞬間に思い出してくれた。準備は、遅れて効いてくるんです。すぐ結果が出ないことを、失敗だと思わなくていい。まだ芽が出ていないだけ、というだけのことなんですよね。
追いかけて捕まえにいくより、覚えていてもらう準備に時間を使う。そのほうが、長い目で見るとずっと楽ですし、うちらしいなと感じています。焦って追いかけるより、じっくり見つけてもらう準備を。そのほうが、きっと続けやすいはずです。
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