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ブランディング 2026.07.15

ラベルをはがしても、選ばれるか

WRITER
Nakamura Hiroki クリエイティブディレクター / 代表取締役
Nakamura Hiroki

クリエイティブディレクター / 代表取締役。ブランドマネージャー1級/インターナルブランディング認定コンサルタント/WEBデザイン技能士/WEBマーケティング検定/ネットショップ実務士。

ラベルをはがしても、選ばれるか
この記事は、YouTube(音声ラジオ)でも聴けます。作業のおともに、ながらでどうぞ。

こんにちは、アプリコットデザインの中村です。

最近、ラベルのついていないペットボトルの水が増えました。透明なボトルに、キャップだけ色がついていて、まわりのフィルムがない。よく語られる理由は、環境への配慮です。それはもちろんその通りなのですが、僕はあのラベルのない水を見るたびに、ブランドの本質のようなものを感じます。今日は、ブランディングの現場で考えている「選ばれ方」の話を、この水を入り口に書いてみます。

差がつかないのに、選ばれている

水は、正直なところ、味の違いがそれほどわかりません。目隠しで飲み比べて、銘柄を全部当てられる人は多くないはずです。しかも中身は無色透明で、無味無臭。商品としては、これ以上ないほど差のつきにくいものです。いわゆるコモディティの代表格ですね。それなのに、僕らはコンビニの棚の前で、なんとなくいつものメーカーの水を選び、「これなら安心だ」と手に取る。中身はほとんど同じはずなのに、選んでいる。ここに、ブランドというものの正体が表れていると思うのです。

ラベルは、要するに説明であり、飾りです。どこのメーカーで、どんな水か、を伝えるためのもの。その説明を全部はがしても選べてしまうのは、もう知っているから、信頼しているからです。ボトルの形、キャップの色で「これはあそこの水だ」とわかる。わざわざ説明されなくても選べる。これこそ、ブランドの究極のかたちだと思います。ブランドとは、突き詰めれば「説明がいらない状態」のこと。説明や飾りをはがしても選ばれる、これ以上ないほど強い選ばれ方です。

ラベルを外せるのは、信頼を勝ち取った側だけ

よく考えると、ラベルを外せるのは、すでに信頼を積み上げたブランドだけの特権です。名前も知られていない水が、ラベルを外して透明なボトルで置いてあっても、なかなか手に取ってもらえません。むしろ「大丈夫だろうか」と不安になる。ラベルをはがすという思い切りができるのは、はがしても大丈夫だという自信と信頼が、もう積み上がっているからこそなのです。

逆から見ると、よくわかります。「これは天然水で、こだわりの製法で」と一生懸命に説明したり、キャンペーンやおまけで気を引いたりしないと選ばれないうちは、まだブランドになりきれていない、ということでもある。飾りや説明で差をつけている間は、その飾りを外した瞬間に、選ばれなくなってしまいます。これは水だけの話ではありません。機能でも価格でも差がつきにくくなった今、たいていのサービスはスペックを並べても横並びに見えます。スペックという名の”ラベル”を盛っていく道もありますが、盛ったラベルは、もっと盛る相手が現れれば負けてしまう。差を作り続ける競争には、終わりがないのです。

足す前に、はがしても残るものを探す

だから僕は、ブランディングでお客さまと向き合うとき、何かを足すことから始めません。新しいロゴやかっこいいコピーといった飾りを乗せる前に、まず一緒に探すのは逆のほうです。実績も、肩書きも、見せ方も、外側についているものを全部はがしたときに、それでもお客さまが選んでくれる理由は何なのか。そのはがしても残る芯が見つかれば、あとの飾りは、その芯に沿って足していけばいいだけになります。順番として、いつもそこから始めています。

この「はがしても選ばれる信頼」は、一日ではつくれません。ラベルはその日にデザインを変えればすぐ新しくできますが、信頼はそうはいかない。一つひとつの仕事をちゃんとやる、約束を守る、都合の悪いときもごまかさない。その地味な積み重ねでしか育たず、近道がありません。だからこそ、いったん育つと簡単には崩れず、他社にもそう簡単には真似されない。ラベルは一晩で真似できても、その裏の積み重ねは真似できない。時間がかかることは、弱点ではなく、むしろいちばんの強みなのだと思います。

もしよかったら、一度、自社の仕事からラベルを全部はがしてみてください。会社の名前、肩書き、これまでの実績、見せ方。外側についているものを、いったん全部外してみる。それでも「あなたにお願いしたい」と選んでもらえる理由が、何か残っているでしょうか。それこそが、あなたの会社の本当のブランドです。もし、あまり残らないと感じても、落ち込むことはありません。これから、その芯を育てていけばいいというだけの話ですから。飾りで選ばれるのではなく、はがしても選ばれる。そういう仕事を、こつこつ続けていきたいですね。

今日より明日が、ちょっと楽しくなりますように。

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