こんにちは、アプリコットデザインの中村です。
お客様から制作のご相談をいただくとき、最初のご依頼はたいてい「モノ」のかたちで届きます。ロゴをつくりたい、チラシをつくりたい、ホームページをリニューアルしたい。もちろん、それはとても大事な入り口です。ただ、僕らが本当に見ているのは、そのモノができあがったあとのことだったりします。今日は、僕らが制作の前にいつも確かめていることを、少しお話しさせてください。
お客様がほしいのは、データそのものではない
たとえば家を建てるとき、建てる前は間取りや外観で頭がいっぱいになります。でも、家は建った瞬間がゴールではありません。本当のゴールは、その家で暮らすこれからの毎日のほうにある。仕事も、これと同じだと思っています。
ロゴやチラシ、ホームページ。お客様が本当にほしいのは、その完成データそのものではなく、それを使ったあとに起きてほしいことのほうです。お店にお客さんが来てくれる。採用の応募が増える。スタッフが自分の会社を好きになる。だから僕らは、「何をつくるか」を決める前に、「これができたら、御社のまわりで何が変わるといいですか」を、時間をかけて一緒に言葉にしていきます。ここがそろっていると、そのあとの制作は迷いがぐっと減ります。逆にここが曖昧なまま手を動かすと、きれいなものはできても、なんだかしっくりこない。つくる技術の問題ではなく、目指す場所がずれているだけ、ということが実はよくあるのです。
「きれいなメニュー」と「お店が回るメニュー」は別物
飲食店のメニュー表を例にします。見た目をきれいにするだけなら、正直そんなに難しくありません。でも、そのメニューを手にするのはお店のスタッフさんで、それを見て注文するのはお客さんです。だとしたら、スタッフさんが「これ、おすすめですよ」と説明しやすいか。お客さんが迷わず頼めるか。写真を見て「おいしそう」と思えるか。そこまで考えて初めて、そのメニュー表は仕事をしてくれるようになります。きれいなだけのメニューと、お店が回りやすくなるメニューは、見た目が似ていても、まったく別のものです。
ロゴのリニューアルも同じです。「古くなってきたので新しくしたい」という入り口の奥には、たいてい別の理由があります。新しく入ったスタッフに会社を好きになってほしい。若いお客さんにもちゃんと見てもらいたい。だとすれば、ご依頼は「新しいロゴ」でも、本当につくりたいのは「この会社で働けてよかったと思える空気」だったりします。そこが見えているかどうかで、同じロゴでも、でき上がるものは変わってきます。
値段でたたかれる場面は、なぜ起きるのか
「モノ」で考えると、値段は下がっていきやすいものです。チラシ一枚いくら、ロゴ一個いくら。数えられるものにすると、「もっと安いところがある」という比較になっていく。同じモノなら、安いほうがいいに決まっていますから、当然です。
ただ、同じチラシでも、言われた通りにつくるのと、「これで誰に、どう動いてほしいのか」まで一緒に考えるのとでは、お客様が手にするものが違います。前者は作業、後者はその先の結果です。ここで大事なのは、安いほうを選ぶお客様がケチだ、という話では決してないこと。多くの場合、その二つの違いがまだ見えていないだけなのです。パッと見は、どちらも「チラシ一枚」ですから。だからこそ、その先で何が変わるのかを、こちらがちゃんと言葉にして、一緒に見えるようにする。そこまでが僕らの仕事だと考えています。
「作業を代行するだけ」で終わらせない理由
アプリコットデザインには、「作業代行だけで完結する仕事はしない」という決め事があります。少し冷たく聞こえるかもしれませんが、そのほうがお客様のためになると思っているからです。言われた通りにきれいなものをつくって納めて終わり、だと、次に似たことが起きたとき、また誰かに頼まないといけません。つくったものは残っても、お客様のなかには何も残らない。それよりも、「どう考えて、これをつくったのか」を一緒に共有できれば、次からはお客様自身で判断できるようになります。魚を渡すのではなく、釣り方を一緒に考える。それが、僕らの言う「育てる」という関わり方です。
これはデザインに限った話ではありません。社内の会議資料も、きれいにまとめることではなく、見た人の意見がそろって次に進めることが本当のゴールのはず。「この一枚を見た人が、何を決められるといいか」を先に思い浮かべると、資料は変わります。だからこそ僕らは、「これができたあと、御社はどうなっていたら成功か」を、制作のいちばん最初に、お客様と一緒に言葉にすることから始めます。つくるのは、そのあとで十分に間に合うのです。
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