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ブランディング 2026.07.22

なんでも引き受ける会社ほど、安く見られる|「やらないこと」を決めるブランディング

WRITER
Nakamura Hiroki クリエイティブディレクター / 代表取締役
Nakamura Hiroki

クリエイティブディレクター / 代表取締役。ブランドマネージャー1級/インターナルブランディング認定コンサルタント/WEBデザイン技能士/WEBマーケティング検定/ネットショップ実務士。

なんでも引き受ける会社ほど、安く見られる|「やらないこと」を決めるブランディング
この記事は、YouTube(音声ラジオ)でも聴けます。作業のおともに、ながらでどうぞ。

こんにちは、アプリコットデザインの中村です。

会社のブランディングをお手伝いしていると、「これもできますか」「あれもお願いできますか」と、依頼の幅がどんどん広がっていく場面によく出会います。頼っていただけるのはありがたいことです。けれど、実務の現場で何度も感じてきたのは、なんでも引き受ける会社ほど、だんだん「安いか高いか」でしか比べてもらえなくなる、ということでした。今日は、この「引き受ける範囲」と、会社の値段の話を書いてみます。

「なんでもやります」は、何屋か分からないと同じ

お客様が発注先を選ぶとき、頭の中でやっているのは「これは、どこに頼もう」という思い出す作業です。このとき選ばれるのは、たいてい「この分野なら、あの会社」という、輪郭のはっきりした会社です。逆に、なんでも幅広くやってくれる会社は、あると助かるのですが、指名では思い出されにくい。指名で選ばれないと、残るのは相見積もりの土俵です。そこでは、提供している価値の中身ではなく、金額の大小で並べられてしまう。「なんでもやります」という看板は、やさしさのつもりでも、お客様から見ると「結局、何が強い会社なのか分からない」と映ってしまうことがあるのです。

値段の面でも、同じことが起きます。あれもこれもと引き受けていくと、会社の仕事は「作業がいくつあるか」で測られるようになります。作業の数で測られるものは、必ず「もっと安く、もっと早く」で比べられる。どれだけ気を利かせて先回りしても、その気配りは見積書の金額には乗りません。むしろ「言えばやってくれる会社」という前提ができて、次からもっと頼みやすくなる。丁寧さが、値引き交渉の入り口になってしまうのです。

「やらないこと」を決めると、選ばれる理由が立ち上がる

だからこそ、ブランディングでは「何をやらないか」を決めることが、とても大きな意味を持ちます。うちの会社も、やらないことをわざわざ決めています。安さだけで比べられる仕事は選ばない、作業を代行するだけで終わる関わり方はしない、といったことです。決めた当初は、仕事を選ぶなんてえらそうではないか、来た話は全部受けたほうがいいのではないか、という迷いもありました。けれど実際には、逆でした。「何をやらないか」を決めたことで、「では、自分たちは何をやる会社なのか」がはっきりして、そこに共感してくださるお客様が集まるようになった。全部やりますと言っていた頃より、話が早く、値段の綱引きも減っていったのです。

これは、会社の看板を磨く作業そのものです。専門を名乗る会社が冷たいのかというと、逆で、「これはやりますが、これはやりません」がはっきりしている会社ほど、その一点については間違いなさそうだ、と信頼されます。断ることは、お客様を突き放すことではなく、「引き受けた領域では、絶対に外しません」という約束の裏返しなのだと思います。

提案の前に、線を引く

実際にお客様と進めるとき、僕がはじめにやることも、これに近いです。「何をするか」を決めるのと同じくらい、「今回はここはやりません」「ここはこういう形にします」という線を、最初に一緒に引きます。この線がないまま走り出すと、あとから「これもお願いします」が少しずつ乗ってきて、お互いに苦しくなる。最初に引いておけば、その内側では思いきり力を出せますし、外側を頼まれても「それはこういう形でなら」と落ち着いて話せます。線を引くのは、断るためではなく、いい仕事をするための準備です。

もしよかったら、次にサービスや価格を見直すとき、「何を足すか」の前に「何をやめるか」を一度考えてみてください。全部の依頼を守ろうとすると、結局どれも中途半端になります。引き受ける範囲を減らしたぶんだけ、残った強みの輪郭がくっきりして、その会社ならではの選ばれ方が立ち上がってきます。何を引き受けるかと同じくらい、何を引き受けないか。そこに、価格で比べられないブランドの芯があります。

今日より明日が、ちょっと楽しくなりますように。

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