こんにちは、アプリコットデザインの中村です。
ブランディングのお手伝いをしていると、「もっと幅広い層に届くようにしたい」「どんなお客さまにも好かれるようにしたい」というご相談をよくいただきます。とても自然な願いです。けれど、実務の現場で何度も感じてきたのは、全方位に好かれようとするほど、かえってブランドの印象はぼやけていく、ということなんです。今日は、この「絞る」「捨てる」ことと、らしさの関係を書いてみます。
みんなに向けた瞬間、誰にも向かなくなる
あれもいい、これもいい、どんな人にも合いますよ。そう打ち出した瞬間に、そのブランドは、誰の「これだ」にもならなくなります。逆に、「これ、すごくいいよね」と強く思ってくれる人がいるブランドには、必ずと言っていいほど、「自分は別に」という人もセットでいる。誰かに強く好かれることは、別の誰かには刺さらないことを引き受けることだからです。全員に刺さる、ということは、基本的に起きません。
飲食店をイメージするとわかりやすいと思います。和も洋も中華もスイーツもある店は便利ですが、「あの店といえば、これ」とはなりにくい。一方で、この一皿で勝負しています、という店は、合わない人は来ないかもしれないけれど、好きな人は遠くても通う。心に残り、選ばれ続けるのは、たいてい後者です。ブランドも、まったく同じです。
らしさは「何を大事にしないか」で決まる
らしさとは「何を大事にするか」を決めることだと、よく言われます。でも、実務ではそれとセットで、「何を大事にしないか」を決めることが欠かせません。全部は大事にできないからです。あれも大事、これも大事、とすべてを抱えると、結局、何も際立たない。何かを大事にするということは、裏を返せば、何かをあえて大事にしない、と決めること。この「捨てる勇気」が、ブランドの輪郭をつくります。
だから、僕がお客さまとブランディングをするとき、必ずやることのひとつが、「誰に、いちばん喜んでほしいのか」をはっきり決めることです。たった一人でもいい。その人に思い切り向けていくと、不思議なことに、その一人だけでなく、周りにいる似た価値観の人たちにも、ちゃんと届いていく。逆に、全員に向けようとした瞬間、メッセージは誰にも向かなくなる。的が広すぎると、どこにも当たらないのです。
好かれようと「しすぎない」
ひとつ補足すると、これは「わざと尖って、嫌われにいく」という話ではありません。好かれようと「しすぎない」、ということです。市場や他社の目を気にして自分たちを曲げるのではなく、自分たちが本当にいいと思うことを、まっすぐ届ける。その結果、合わないお客さまがいても、それでいい、と思えるかどうか。全員に好かれようとして角を取った無難なブランドより、はっきりした一皿を持ったブランドのほうが、深く、長く選ばれます。
もしよかったら、自社の発信や商品を、一度見直してみてください。それは、全員に向けていないでしょうか。誰にも嫌われないように、といつのまにか角が取れて、無難になっていないでしょうか。もしそうなら、たった一人、この人に届けばいい、という人を思い浮かべてみる。その人のために、少しだけ、はっきりさせていい。全方位に好かれる必要はありません。「私たちはこれを大事にしている」とまっすぐ言えるブランドこそが、いちばん、選ばれ続けます。
今日より明日が、ちょっと楽しくなりますように。
JOURNALが気に入ったら「いいね」してね!



