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ブランディング 2026.07.20

デザインの出来は、作りはじめる前に決まっている

WRITER
Nakamura Hiroki クリエイティブディレクター / 代表取締役
Nakamura Hiroki

クリエイティブディレクター / 代表取締役。ブランドマネージャー1級/インターナルブランディング認定コンサルタント/WEBデザイン技能士/WEBマーケティング検定/ネットショップ実務士。

デザインの出来は、作りはじめる前に決まっている
この記事は、YouTube(音声ラジオ)でも聴けます。作業のおともに、ながらでどうぞ。

こんにちは、アプリコットデザインの中村です。

ブランディングやデザインのご相談をいただくと、「うちの良さが、なかなか伝わらない」という声をよく聞きます。いいものを作っている。まじめにやっている。それなのに、思うように伝わらない。今日は、その「伝わらない」がどこから来るのか、僕らの仕事の裏側から書いてみます。

デザインという仕事は、世の中でけっこう誤解されています。机に向かって、感覚だけでかっこいい見た目を仕上げている職人。そんなイメージが強いと思います。もちろん、手を動かして形にするのは大切な工程です。でも、いくつもの案件を重ねて分かったのは、仕上がりの質を決めているのは、制作している時間そのものではなく、その前段にある、依頼主と話し込む時間のほうだ、ということでした。ここが成果物には映らないので、誤解されやすいんです。

仕上がりの良し悪しは、作りはじめる前に決まっている

料理でいう下ごしらえに近いかもしれません。お皿に盛りつける瞬間は華やかですが、味を決めているのは、その前の、だしを取ったり素材を選んだりする、見えない手間のほうです。制作も同じで、最終的なクオリティは、手を動かしはじめる前の段取りで、その多くが決まってしまう。目立つ仕上げよりも、地味な準備のほうに勝敗がある。だから僕らは、ロゴ一つのご依頼でも、すぐにデザインへは入りません。その会社が何を大事にし、どんな相手に、どう受け止めてほしいのか。事業を始めた頃の動機まで含めて、時間をかけてうかがうところから始めます。

やっているのは、その会社の中にすでにある価値を、目に見えるかたちへ翻訳する作業です。難しいのは、当の会社自身も、自分たちが本当は何を伝えたいのか、最初は言葉にできていないことが多い点です。ぼんやりした手ざわりを、対話を重ねながらほどき、輪郭を与えていく。僕らのミッションに、「対話の中から価値を見つけ、言葉にし、社会へ、正しく届ける」という言葉があります。価値は外から足すものではなく、もともと相手が持っているもので、それを引き出して差し出すのが僕らの役割。この考え方が、ブランディングの土台になっています。

聞く工程を飛ばすと、かえって高くつく

この聞く工程を省いて、いきなり制作へ進むと、何が起きるか。実務では、これがいちばんコストになります。見た目はそれっぽく仕上がるのに、関係者の誰かが「なんかちがう」と感じ、方向がずれていることが後から分かる。修正が重なり、作り直しになり、結局、時間も費用も余計にかかる。急いで進めたつもりが、いちばん遠回りだった、ということが起こります。最初に聞くのは、丁寧さのためというより、プロジェクトをまっすぐ、最短で進めるための段取りなんです。

「作りたいもの」の奥に、本当の課題がある

ご相談の入口と、本当の課題がずれていることも、よくあります。「チラシを作りたい」というお話が、聞いていくと、本当に困っていたのはチラシがないことではなかった。どう見せるかの前に、そもそも「誰に向けて出すのか」が、社内でも定まっていなかった。ここが曖昧なままでは、どんなチラシを作っても手応えが出ません。まずそこを一緒に整理していくと、「うちが本当に来てほしいのは、この人たちだったんだ」が見えてきて、作るべきものも決まっていきます。整理の結果、チラシより先に見直すべきものが見つかることもあります。

「ホームページを新しくしたい」というご相談も、よく聞くと、社内で自分たちの言葉がまだ揃っていなかった、というケースがあります。見た目を変えたいというより、自分たちが何者なのかを、もう一度言葉にしたかった。表に出ている「作りたいもの」と、その奥にある「本当に解きたい課題」は、別のところにあることが少なくありません。最初のご要望をそのまま受けて手を動かすと、いちばん大事なところを飛ばしてしまう。だから僕らは、作り手であると同時に、まず聞き手であろうとしています。

もし、自分たちの良さがうまく伝わっていないと感じることがあったら、制作を発注する前に、社内で二つだけ確かめてみてください。「うちが本当に大事にしている一点は何か」。そして「それを、誰に、どう受け取ってほしいのか」。この二つがそろうほど、デザインは迷いなく決まり、仕上がりもぶれません。作る前のこの一手間が、いちばん効いてきます。もちろん、そこを一緒に掘り起こすところから、僕らはご一緒します。

今日より明日が、ちょっと楽しくなりますように。

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