こんにちは、アプリコットデザインの中村です。今日は、消費者目線という言葉について書きます。結論から言うと、消費者目線というのは、自分の感覚を事実だと思い込まないことだと思っています。
マーケティングでは昔から、消費者目線で考えることが大切だと言われてきました。僕もそのとおりだと思います。ただ言葉で言うほど簡単ではありません。
むしろその業界に長くいるほど難しくなっていきます。知らないうちに、自分の中の当たり前が増えていくからです。
業界の当たり前とお客様の当たり前は違う
たとえば、住宅会社で働いている人にとって、家の性能や施工方法にくわしいのは当たり前です。毎日その話をしているので、特別なことだと思っていません。
でもはじめて家を建てる人にとっては違います。住宅会社の人が「こんなの、どこの会社でもやってるよ」と思っていることがある。それが、お客様からすると「そこまでやってくれるんですか」という価値になります。
逆もあります。自分たちが「これはすごい」と思って一生懸命に伝えていることが、お客様にはそれほど重要ではない。これもよく起きることです。
だからこそ、消費者目線が大切だと言われるわけです。
自分の目線から完全には離れられない
ただここで一つ問題があります。そもそも僕たちは、自分の目線から完全に離れることができないのではないか、というところです。
ビールで考えてみます。
ある人にとって、ビールは週末に飲むものだったとします。仕事が終わった金曜日や、土曜日に飲む。それが何年も続くと、その人の中には、ビールは週末のものだという感覚が自然にできあがります。
その人が、ビールの広告の会議に出たとします。ビールって週末に飲む人が多いですよね、だったら週末に向けた広告がいいんじゃないですか。そんな意見が出てくる。
一見、もっともらしい意見です。でも本当にそうでしょうか。
仕事が終わった金曜日に飲む人もいれば、休みの日に昼から飲む人もいます。スポーツを見ながら飲む人、友人と集まったときだけ飲む人、そもそもまったく飲まない人もいます。
「ビールは週末に飲むもの」は、世の中の常識ではありませんでした。その人の常識だっただけです。
怖いのは「普通は」という言葉
やっかいなのは、自分の中で当たり前になっていることほど、それが自分だけの感覚だと気づきにくいところです。
無意識のうちに普通はこうだよね、みんなそう思ってるでしょ、と考えてしまう。マーケティングで一番怖いのは、この「普通は」という言葉です。
これはマーケティングにかぎった話でもありません。
たとえば交通ルール。守るものだと思っていますよね。でも世の中の全員が同じように考えているわけではありません。少しぐらいならいいや。誰も見ていなければいいか。そう考える人もいます。
もちろん交通ルールは守らないといけません。ここで言いたいのは、正しいか間違っているかの話ではないということです。自分が当たり前だと思っていることを、他人も同じように当たり前だと思っているとはかぎらない。
同じ価値観のほうが不思議
考えてみれば当然です。一人ひとり、生きてきた人生が違います。育った環境も住んでいる場所も違う。仕事も収入も違います。
今おかれている状況も、大切にしているものも違います。何に困っているかも、何に向かってがんばっているかも違う。
それだけ違う人たちが、まったく同じ価値観を持っているほうが不思議ですよね。
仮説を立てるところまではいい
だから、僕は、消費者目線で考えるために最初に必要なのは、自分と他人は違うという感覚を忘れないことだと思っています。
「僕はこう思う」と「お客様もこう思う」は、別の話です。
自分の感覚から仮説を立てること自体は、悪くありません。むしろそこからしか始まらない。大切なのは、それを事実だと思い込まないことです。
僕はこう思う。でも本当にみんなもそうなんだろうか。これは業界では当たり前だけど、お客様から見たらどうなんだろう。逆に、自分たちが大したことないと思っていることに、お客様は価値を感じていないだろうか。
そんなふうに一度、自分の当たり前を疑ってみる。そのうえで、お客様の話を聞いて、行動を見て、データを確かめます。
括りの向こう側にいるのは一人の人
マーケティングをしていると、消費者という大きな括りで人を見てしまいがちです。でもその向こう側にいるのは一人の人ですよね。
それぞれ違う生活をして、それぞれ違う経験をして、それぞれ違う価値観を持っている。
だから普通はこうだ、みんなこう思ってる、と決めつけない。こういう人もいるかもしれない。別の見方をしている人もいるかもしれない。そうやって、できるだけ幅を持って考えてみる。その姿勢が、消費者目線に近づくために大切だと思っています。
売り方を考える前にやること
まとめます。
自分の当たり前は、誰かにとっての当たり前ではありません。そして、自分にとって価値がないものが、誰かにとって大きな価値になることもあります。
マーケティングは、商品をどう売るかを考える前に、自分とは違う人を想像するところから始まります。
会議で「普通は」という言葉が出たとき。その普通は誰の普通なのか、そこで一度だけ確かめてみてください。自分たちが当たり前にやっていることが、お客様には決め手になっていた、ということはよくあります。
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