こんにちは、アプリコットデザインの中村です。昨日は「デザインは、盛らないほうがいい」という話を書きました。会社の見せ方の話でしたが、これはそのまま、自分自身の見せ方にも当てはまります。今日は、仕事の場面での「等身大」について書いてみます。
プロフィールで、少し大きく見せたくなる
自己紹介、プロフィール、SNSの発信。そういう場所で、実際の自分より、ちょっとだけ大きく見せたくなること、ありませんか。
嘘をつくわけではないんです。ただ、盛る。まだ一回しかやったことのないものを「やっています」と書いてみたり、たまたまうまくいった一件を、いつもそうであるかのように書いてみたり。語尾を少しだけ強くして、自信があるふうに整えてみたり。
その気持ちは、僕にもよく分かります。だって、そのほうが選んでもらえそうな気がしますよね。ただ、これをやると、あとがけっこうしんどいんです。
「得意です」と言って受けた仕事の、その後
たとえば、本当は少し不安がある分野の仕事を、「得意です」と言って受けたとします。取れた瞬間は嬉しい。でも、そのあとずっと、得意なふりをし続けることになります。
分からないことを、分からないと言えない。相談もできない。時間もかかる。しかも相手の期待値は「得意な人」に合わせて上がっているので、普通にやっても物足りなく見えてしまう。
一方で、最初に「そこは正直まだ経験が浅いので、こういうやり方で進めさせてください」と言って受けた仕事は、全部の会話がラクなんです。分からないことを聞ける。途中で相談できる。結果として、そちらのほうが、いいものができたりする。
同じ人が、同じ力でやっているのに、最初の一言が違うだけで、こんなに違うんですよね。
盛った自分で選ばれると、演じ続けることになる
背伸びというのは、要するに、自分と見せ方のあいだに距離をつくることだと思っています。その距離が開けば開くほど、埋めるのに毎日エネルギーがいる。演じている時間が長くなる。
そして、これがいちばん切ないのですが、うまくいっても、あまり嬉しくないんです。盛った自分で褒められると、心のどこかで「これは本当の自分じゃないほうが評価されているな」と思ってしまう。だから、自信になっていかない。むしろ、バレたらどうしようという不安が増えていく。頑張っているのに、なぜか減っていく感じがあります。
なぜ盛りたくなるのか
たぶん、自分の実物が、自分でよく見えていないからだと思います。
自分のことって、いちばん分かっているようで、いちばん見えない。とくに、自分ができていることは見えません。毎日やっていることは、自分にとっては当たり前になってしまうので、価値だと思えない。だから手元にあるものが少なく見えて、外から何か持ってきて足そうとしてしまう。
でも、他の人から見ると、そこはぜんぜん当たり前じゃなかったりします。「よくそんなに細かく見られますね」「そこまで気にする人、あまりいないですよ」と言われて、きょとんとしてしまう。褒められている自覚がないんですよね。
だから、自分を知るのにいちばん手っ取り早いのは、人に聞くことだと思っています。自分の中を掘っても、当たり前のものは出てこない。人の目を借りたほうが早い。
僕がお客様とブランディングをやるときも、社長さんの中だけを掘ることはしません。周りの方にも聞きますし、お客様がなぜこの会社を選んだのかも聞きに行きます。自分では見えない部分に、たいてい答えがあるからです。
等身大は、今のままでいい、という意味ではない
ここは、はっきりさせておきたいところです。等身大でいることと、成長しないことは、まったく別です。
等身大というのは、今、自分がどこに立っているのかを正確に分かっている、ということ。むしろ、これが分かっていないと前に進めません。地図を見て、現在地が違うところに打たれていたら、どこにも行けないですよね。背伸びは、その現在地を実際より少し先に打ってしまうことなんです。そこから道を引くから、いつまでたっても着かないし、なんだかずっと苦しい。
背伸びと成長は、順番が逆なんだと思います。背伸びは、見せ方を先に変える。成長は、中身を先に変えて、見せ方はあとからついてくる。おもしろいもので、中身が先の人は、だんだん自分を大きく見せる必要がなくなっていきます。実物のほうが上回っていくので、説明がいらなくなる。逆に、見せ方が先の人は、いつまでも説明し続けることになります。
「できません」と言える人のほうが、信じられる
もう一つ。等身大で言えることは、それだけで信頼になります。
「これはできます、これはできません」とはっきり言える人は、できると言ったことのほうも信じられますよね。なんでもできます、と言われるより、ずっと安心できる。できないと言える人は、都合の悪いことも言ってくれる人だ、と伝わるからだと思います。
だから、正直でいることは、実はいちばん効率のいい戦い方でもあります。演じなくていいぶん、そのエネルギーを全部、中身のほうに回せるからです。
とはいえ、こういう話をしながら、僕自身もずっと練習中です。人前で話すときに、少しよく見せたくなる気持ちは正直あります。たぶん、なくならない。だから、なくそうとするより、気づけるようにしておくくらいがちょうどいいのかなと思っています。「あ、いま少し盛ったな」と自分で分かる。それだけでも、けっこう違います。
プロフィールを、読み返してみる
もしよかったら、自分のプロフィールや、会社の紹介文を読み返してみてください。これを読んだ人が、実際に会ったとき、「思っていたとおりだ」と感じるだろうか。それとも、「ちょっと違うな」と感じるだろうか。
少し盛っているところがあったら、削ってみる。削ると、最初は物足りなく見えます。でも、そこに残ったものが、これから育てていける本当の持ち物です。
短距離なら、背伸びでも走れます。でも、仕事はけっこう長い。長く走るなら、自分の足のサイズに合った靴のほうがいい、という話でした。
JOURNALが気に入ったら「いいね」してね!



