こんにちは、アプリコットデザインの中村です。
「いい内容なのに、なぜか選ばれない」「正しく説明しているのに、なぜか刺さらない」。ブランディングやホームページのご相談をいただくと、この手ざわりの悩みによく出会います。今日は、その理由と、僕が制作の実務でいちばん最初にやっていることを書いてみます。
提案が横並びになったとき、決め手になるのは何か
お客様が制作会社やパートナーを選ぶ場面に、僕らはよく立ち会います。そこで感じるのは、提案の内容が近い会社が何社かあったとき、最後の決め手になるのは、たいてい数字やスペックではない、ということです。「この人となら気持ちよく進められそう」「話していて安心できた」。決まっていくのは、そういう感覚のところです。
実力や実績という土台があってのことですが、そこが横並びになったとき、最後のひと押しは、いつも気持ちの側にある。提案書の完成度や価格表だけで決まっているわけではない、というのは、選ばれる側に立つ会社ほど実感があるのではないかと思います。正しさは相手に「なるほど」と思ってもらうためのもの。でも「この会社にお願いしよう」という一歩を運ぶのは、そのとき相手が感じた気持ちのほうなんです。
ブランディングは、情報を整える仕事ではない
だから僕は、ブランディングの仕事の本当の中身は「相手にどんな気持ちになってもらうかを決めること」だと考えています。ロゴをきれいに作ることも、文章をわかりやすく整理することも、写真のトーンを揃えることも、全部そのための手段であって、目的ではありません。目的は、それを受け取った人がどんな気持ちになるか。ここがぶれると、見た目がどれだけ整っていても、なんとなく心に残らないものになってしまいます。
僕らの会社の理念は「シアワセをデザインする」という言葉です。これは突きつめると、情報を整える仕事ではなく、受け取った人の気持ちをデザインする仕事だ、という宣言でもあります。会社案内でも、採用ページでも、サービス紹介でも、最後に効いてくるのは、読んだ人の心にどんな気持ちが残るか、なんです。
実務では「気持ちのゴール」を先に決める
では具体的にどうするか。僕がなにかを作るとき、いちばん最初にやっているのは、内容やデザインを考える前に「これを受け取った人に、どんな気持ちでいてほしいか」を先に決めることです。安心してほしいのか、わくわくしてほしいのか、背中を押されたと感じてほしいのか。このゴールの気持ちが決まると、そこに向かって言葉も色もトーンも選べるようになります。逆に、そこが曖昧なまま作りはじめると、情報は正しいのに、なぜか心に残らないものになりがちです。
たとえば、同じ「サービスの紹介ページ」を作るのでも、読んだ人に安心してほしいのか、それとも、ちょっと期待に胸が高鳴ってほしいのかで、選ぶ言葉も、写真の雰囲気も、文章のテンポも、まるで変わります。安心してほしいなら、落ち着いた言葉で、ていねいに順を追って。期待を持ってほしいなら、少し余白をつくって、想像がふくらむ見せ方に。どちらが正解ということではなく、「どんな気持ちになってほしいか」を先に決めているかどうかで、同じ内容でも届き方が変わる、ということです。
土台があってこその、ひと押し
念のため補足すると、これは「気持ちさえよければ中身は雑でいい」という話ではありません。制作の現場でいちばんもったいないのは、ロゴも文章も写真も整えきったのに、「どう感じてほしいか」だけを決めないまま公開してしまうことです。土台は要る。正確さも、実績も欠かせません。でも、土台をつくるだけで力を使い切ってしまい、最後のひと押しになる気持ちの設計まで手が回らない。そのまま世に出てしまう制作物を、僕らはたくさん見てきました。
もし次に、会社案内やサービスページに手を入れる機会があれば、デザインや文章を触りはじめる前に、関わる人みんなで「読み終えたお客様に、どんな気持ちでいてほしいか」を一行だけ共有してみてください。ゴールの気持ちがそろうと、デザイナーも、書き手も、写真を選ぶ人も、同じ方向に向かって選べるようになります。その一行が、制作の途中で迷ったときの帰る場所になります。
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