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ブランディング 2026.08.05

いい写真は、撮る前に決まっている

WRITER
Nakamura Hiroki クリエイティブディレクター / 代表取締役
Nakamura Hiroki

クリエイティブディレクター / 代表取締役。ブランドマネージャー1級/インターナルブランディング認定コンサルタント/WEBデザイン技能士/WEBマーケティング検定/ネットショップ実務士。

いい写真は、撮る前に決まっている
この記事は、YouTube(音声ラジオ)でも聴けます。作業のおともに、ながらでどうぞ。

こんにちは、アプリコットデザインの中村です。ここ数日、撮影の話が続いています。実は理由がありまして、今、10日間連続の撮影の最終日なんです。頭の中が撮影でいっぱいになっている、というだけの話なんですが、せっかくなので今日は撮影の話から少し広げて、仕事の値打ちってどこにあるんだろう、という話を書いてみます。

撮影の仕事は、外からはこう見える

僕は、制作の流れの中で自分で撮影に行くことが多いんです。外から見ると、撮影の仕事はたぶんこう見えます。カメラを持って現場に行って、何枚か撮って、帰ってくる。半日とか、一日とか。だから「一日いくらですか」と聞かれる。

これは仕方のないことだと思っています。目に見えているのが、その部分だけなので。僕自身も、昔はそう思っていました。

でも実際にやってみると、写真の出来は、シャッターを押す前にほとんど決まっているんです。

決めておかないと、きれいでも伝わらない

撮影に行く前に、決めておかないといけないことがあります。この写真は誰に見せるものなのか。見た人にどう思ってほしいのか。ホームページのどこに使うのか。SNSのどこで使うのか。隣にはどんな言葉が入るのか。

これが決まっていないまま現場に行くと、どうなるか。きれいな写真は撮れます。でも、伝わる写真にはならないんです。

たとえば同じ工場を撮るのでも、「ここで働きたい」と思ってもらうための写真と、「ここに任せて大丈夫だ」と思ってもらうための写真は、まったく別物です。前者なら、人の表情や、声をかけあっている場面を撮りたい。後者なら、整理された作業場や、手元の丁寧さを撮りたい。

撮る場所も、時間も、レンズも、待つ瞬間も変わります。何を伝えたいかが決まっていないと、この判断が全部できないんです。

だから僕は、撮影の前に必ず話をします。今回はどこで、誰に見せるのか。今いちばん困っていることは何か。どういう人に来てほしいのか。ここが決まると、当日はもうほとんど答え合わせのようなものになります。

写真がいちばん変わるのは、当日までの準備

当日までにやっておくこともあります。現場をきれいにしておいてもらう。いらないものをどける。掲示物を貼り替える。動線を少し変えてみる。誰にどのタイミングで入ってもらうかを決めておく。天気と光の時間を見て、どの順番で回るかを組む。

地味なのですが、写真がいちばん変わるのは、正直ここです。

そう考えると、撮影という仕事の中身は、シャッターを押すことよりも、その前の工程のほうが大きい。でも、その部分は外からはほとんど見えません。

仕事の値打ちは、たいてい見えないところにある

ここが、今日いちばん書きたいところです。仕事の値打ちは、たいてい見えないところにあります。

でも、値段をつけるときも、比べられるときも、見えている部分だけで判断されがちです。何時間いたか。何枚撮ったか。何ページ作ったか。

そうすると、見えている部分だけを切り出して、安いところに頼もう、という話になります。「撮るだけなら、もっと安い人がいますよ」と。これは実際そのとおりで、撮るだけなら安くできます。スマホのカメラも、本当にきれいになりましたし。

ただ、その買い方をしたときに何が起きるかというと、写真はあるのに使えない、ということが起きます。きれいだけれど、どこに使えばいいのか分からない。伝えたいことと合っていない。それで結局、もう一回撮ることになる。安く買ったつもりが、二回払っている。

作業を買うか、成果を買うか

僕はこれを、「作業を買うか、成果を買うか」の違いだと思っています。

作業を買うと、その作業は手に入ります。でも、それが効くかどうかは、買った側が自分で保証しないといけない。成果を買うというのは、前段の設計から一緒にやる相手を選ぶ、ということです。

そして面白いことに、前段から一緒にやると、写真以外のものも良くなります。撮影のために現場を整えると、その状態はそのまま残ります。誰に何を伝えたいかを社内で話すと、スタッフの方が自分たちの見せ方を意識するようになる。「今日はお客さんが来るから、ここ片付けておこう」と、こちらが言わなくても動くようになったりする。

写真を撮りに行ったはずなのに、会社のほうが少し変わっている。僕は、こういうことが起きたときに、いい仕事ができたなと思います。

予算を下げるときに、削ってはいけないところ

これに関して、よくある場面があります。予算を下げてほしい、と言われるときです。

こういうとき、つい、見えない前段のほうを削ってしまいがちです。打ち合わせの回数を減らす。事前の準備を省く。相手からも見えていない部分なので、削っても怒られない。

でも、ここを削ると成果が落ちます。そして、成果が落ちたことは、あとでちゃんと相手に伝わってしまう。安くしたのに満足してもらえない、といういちばんしんどい終わり方になります。

だから、下げるときに削るなら、見えている量のほうだと思っています。ページ数を減らす。撮る場所を絞る。今回はここまでにして、次の段階でやりましょう、と範囲を区切る。

減らすなら、質じゃなくて量。前段は削らない。これは自分の仕事を守るためというより、相手が損をしないための線引きだと思っています。

判断の部分を、隠さずに渡す

ここまで撮影の話でしたが、これはたぶん、どんな仕事にも同じ構造があります。

お客様から見えているのは、いちばん最後の、目に見える部分だけです。書類、施工、商品、当日の対応。でも実際は、その手前にたくさんの判断があるはずです。段取りを考える。過去の失敗を踏まえて先に手を打つ。相手の話を聞いて本当の困りごとを見つける。あえてやらないことを決める。そこがいちばん効いているのに、値段の説明には出てこない。

とはいえ、「見えない部分に価値があります」と言うだけでは、たぶん伝わりません。「見えないところで頑張っています」は、残念ながらどこの会社も言えてしまうので。

ではどうするか。僕は、その見えない部分を、相手に見えるように渡していくことだと思っています。なぜこの案にしたのか、他にどんな案を検討して、なぜやめたのかを話す。当日までに何を準備したのかを一言添える。事前の打ち合わせで何を決めたかを、ちゃんと形にして渡す。

言い方を変えると、判断の部分を隠さずに見せる、ということです。これをやると、値段の話が比べ合いから抜けていきます。同じものを安く買う話ではなくなるからです。逆に、ここを全部こちらの中に隠してしまうと、どんなに手をかけていても、出てきた成果物だけで判断されます。相手にはそれしか見えていないので、それはもう仕方がないんですよね。

こういうことを言うのは、少し恩着せがましい気がして、気が引ける。そういう方も多いと思います。僕自身もそうです。でもこれは、自分の苦労を分かってもらうためではなく、相手が自分で判断できるようになるための材料を渡すこと。まったく別のことだと思っています。

「これは、撮る前の部分だな」を一つ挙げてみる

もしよかったら、自分の仕事の中で「これは撮る前の部分だな」というところを、一つ挙げてみてください。

納品物や制作物からは見えないけれど、実はそこで質が決まっている、という部分です。そして、それをお客様に言葉にして伝えているかどうかを考えてみる。もし伝えていないなら、次の一回だけでも伝えてみる。

たぶんそこが、いちばん自分の仕事の値打ちが伝わるところだと思います。

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