こんにちは、アプリコットデザインの中村です。今日は「競合なんていない、という考え方」について書いてみます。
ビジネスをしていると、競合、ライバル、という言葉がどうしても出てきます。あの会社が値段を下げたから、うちも下げないと。あそこが新しいサービスを始めたから、うちも追いかけないと。気づけば、まわりを見て、まわりに合わせて、まわりと同じ土俵で戦っている。そういう会社は、本当に多いと思います。
これは、なかなかしんどい状態です。まわりを気にしている間は、ずっと相手の動きに振り回されますし、自分たちがどこへ行きたいのか、だんだん見えなくなってきます。頑張っているのに、なぜか消耗していく。心当たりのある経営者や担当者の方は、多いのではないかと思います。
僕はいつもお客様に、戦って勝つよりも、戦わずに選ばれる方をおすすめしています。今日は、その根っこにある考え方をお伝えします。
同じ棚に並んでいても、奪い合っていない
結論から言うと、本当の意味での競合は、実はほとんどいないのではないか、と僕は考えています。同じような商品を売っていても、同じような業種であっても、お客様がその会社を選ぶ理由が違えば、それはもう別のものを提供していることになります。同じ棚に並んでいても、実は奪い合っていない。そういうことが、会社の現場ではよく起きています。
たとえば、スターバックスの競合はどこでしょうか。コーヒーを飲むだけなら、もっと安いお店はいくらでもあります。値段で比べたら、スターバックスは競合だらけです。でも、スターバックスに行く人は、コーヒーだけを買いに行っているわけではありません。落ち着ける空間だったり、自分の時間を過ごせる居心地だったり。コーヒーそのものよりも、その周りにある体験にお金を払っています。
だとすると、スターバックスが本当に提供しているのは、コーヒーというより「居場所」なのかもしれません。家でも会社でもない、サードプレイスという言葉がありますが、まさにその居場所を提供している。そう考えると、隣にある安いカフェは、実はそれほど競合ではないのです。
ディズニーランドも同じです。ディズニーが売っているのは、アトラクションそのものというより、夢や、非日常の体験です。だから、他の遊園地とだけ競っているのではなく、映画を観に行くとか、旅行に行くとか、特別な一日をどう過ごすか、という、もっと広いところでお客さんの時間を分けてもらっています。同じ業種で並んでいる会社同士でも、本質のところでは競合していないことが多い、というのが見えてきます。
小さな商いでも、同じことが起きている
これは、大きな会社の話だけではありません。町のパン屋さんでも、同じことが起きています。
パンを売っているように見えて、実は「今日はちょっといい朝にしたい」という気分を売っている、と言えるかもしれません。焼きたての匂いがして、店員さんと一言二言かわして、袋を持って帰る。その時間ごと買っている、という感覚に近いと思います。
だとすると、そのパン屋さんの競合は、隣の別のパン屋さんではなく、コンビニのおにぎりだったり、休日にゆっくり作る自分の朝ごはんだったりします。値段だけで並べたら、たしかにコンビニの方が安い。でも、あの店のパンがある朝が好き、という理由で通ってくれる人にとっては、そもそも比べる対象になっていません。値段が少し高くても、もう他のお店とは並べて見られていない。ここまでくると、そのお店は競争から一歩外に出ている、と言ってもいいと思います。
広報や人事、マーケティングの仕事も、フリーランスで何かを届ける仕事も、これと重なります。表面的には、同じ肩書き、同じスキル、同じようなサービスを持つ人がたくさんいるように見えます。けれど「あなたに頼みたい」と選ばれるとき、その人はもう、値段や機能だけで比べていません。誰から受け取るか、どんな気持ちで受け取れるか。この人となら安心して任せられる、この人の考え方が好きだ。そういうところまで含めて選んでいます。渡しているものが違えば、その人は、その人にしか立てない場所に立っているのです。
お客さんは「向こう側」を買っている
なぜ、こんなことが起きるのか。理由はシンプルです。お客さんは、商品そのものを買っているようで、実はその商品の「向こう側にあるもの」を買っているからです。
コーヒーの向こうにある居場所。パンの向こうにある、いい朝。ディズニーの向こうにある、特別な一日。その向こう側が違えば、たとえ同じ商品を売っていても、もう別の商売をしています。
逆に言うと、まわりを見て「競合が多い」と感じているときは、たぶん商品そのものを見比べています。値段はいくらか、機能はどうか、スペックはどうか。その目線でいる限り、競合はいくらでも増えていきます。似たものは、この世にたくさんあるからです。でも、その向こう側、お客さんが本当に受け取っているものまで下りていくと、景色が変わります。似ているようで、まったく別のものを渡していた、と気づくことがあります。
ブランディングで最初にやること
僕がお客様とブランディングをするときも、最初にやるのはこれです。自分の仕事について、「お客さんは、これを通して本当は何を受け取っているんだろう」を、書き出してみます。売っている商品やサービスそのものではなく、その向こう側を、言葉にしていきます。
それが見えてくると、「あの会社が競合だ」と思っていた相手が、実はぜんぜん違うものを売っていた、と気づくことがあります。そうなったら、もう無理に追いかけなくてよくなります。まわりを見て消耗していた時間が、少しずつ、自分たちのお客さんに向き合う時間に変わっていきます。
競合なんていない。そう思えると、視線がまわりから、自分たちのお客さんの方に戻ってきます。そちらの方が健やかですし、いい仕事にもつながっていくのではないかと思います。
今日より明日が、ちょっと楽しくなりますように。
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