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取引先への値上げ文書を、上から組み直す

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Nakamura Hiroki クリエイティブディレクター / 代表取締役
Nakamura Hiroki

クリエイティブディレクター / 代表取締役。ブランドマネージャー1級/インターナルブランディング認定コンサルタント/WEBデザイン技能士/WEBマーケティング検定/ネットショップ実務士。

取引先への値上げ文書を、上から組み直す
この記事は、YouTube(音声ラジオ)でも聴けます。作業のおともに、ながらでどうぞ。

こんにちは、アプリコットデザインの中村です。今回は、取引先に出す値上げの文書の組み立て方です。価格の改定を決めた経営者の方や、その文面を任された総務・営業の方に向けて書きました。

音声では、子ども向けのピアノ教室が月謝を8,000円から8,800円に上げる例で話しました。会社同士の取引でも同じ順番で書ける、と最後にひとこと添えたので、ここではその文書を作例で組み立ててみます。

読む人が知りたいのは三つ

値上げの文書を開いた人が知りたいことは、三つあると考えています。

  • いつから、いくらになるのか
  • 自分たちにとって、何が変わらないのか
  • 自分たちに、選べることはあるのか

文書の役目は、受け取った会社が自分で判断できるようにすることです。このまま続けるか、内容を見直すか、ほかを探すか。その材料が文書の冒頭にそろっていれば、先方は迷わずに済みます。

取引先から届く値上げの文書を読んでいると、書き出しが似ていることに気づきます。たとえばこんな順番です。

  • 書き出し:「貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます」
  • 次の段落:お詫びと、原材料費・人件費・物流費の高騰の説明
  • 新しい金額:「別紙のとおり」

冒頭がお詫びだと、先方は、何かまずいことが起きたのかと思いながら読み進めます。書いた会社自身が申し訳なさそうに出している金額に、相手が納得するのは、なかなか難しいと思います。

ビル清掃会社の作例で頭から組み直す

オフィスビルの清掃を定期で請けている会社を、例に考えます。ある取引先とは月額12万円で契約していて、11月の作業分から13万2千円に上げることにした、とします。

1. 最初の一文に、いつからといくらを入れる。

「11月の作業分から、月額12万円を13万2千円に改めます。」

「1割の値上げ」と率で書かれると、読んだ人は頭の中で計算し直すことになります。相手が実際に払う金額で書けば、計算はいりません。

年額に直した差額、14万4千円まで書くかは迷うところです。書かなければ隠しているように見えるかもしれないし、書けば大きく見えます。毎月請求している契約なら、月額で書くのが素直だと思います。

2. 変わらないことを書く。

「担当者と、月4回の作業回数は変わりません。」

値上げの文書を読む人は、金額が上がるぶん、何かが減るのではと身構えています。回数が減るのか、担当が替わるのか。変わらないことがひとつ書いてあると、そこがはっきりします。

3. 理由は、その会社のものをひとつだけ。

物価や原材料、人件費を並べると、どこの会社の文書とも同じ文になります。書く前に、自分の会社の社長に「上がったぶんで何をしたいですか」と聞いてみます。夜の作業で床を洗う機械を、静かなものに入れ替えたい、という答えが返ってきたとします。

「夜間の作業で使う床の洗浄機を、12月までに音の小さい機械に入れ替えます。」

これは値上げの理由であり、先方にとって何が良くなるかの話にもなっています。物価の話は、書くならひとことで足ります。

4. 選べることを書く。

「作業の回数や範囲を見直したい場合は、10月末までご相談を承ります。」

選べることがひとつでもあると、先方は知らされる側から、自分で決める側に回れます。

5. お詫びは一回にする。最後に「お手数をおかけしますが、引き続きよろしくお願いいたします。」と添えます。申し訳ない気持ちは、一回あれば伝わると思っています。何度も重ねると、金額そのものが悪いことのように読めてしまいます。

通して読むと

本文は、こうなります。

  • 11月の作業分から、月額12万円を13万2千円に改めます。
  • 担当者と、月4回の作業回数は変わりません。
  • 夜間の作業で使う床の洗浄機を、12月までに音の小さい機械に入れ替えます。
  • 作業の回数や範囲を見直したい場合は、10月末までご相談を承ります。
  • お手数をおかけしますが、引き続きよろしくお願いいたします。

時候のあいさつや宛名は、会社の決まった書式を使います。ここで直したのは本文の順番です。

文書を送る前に担当者からひとこと

毎週顔を合わせている取引先なら、文書を送る前に、口で伝えておけます。この清掃会社なら、定期の作業に入っている担当者が、先方の窓口の方に「11月から金額が変わります。今週、文書をお送りします」とひとこと言っておく。

文書だけが先に届くと、先方は、なぜ直接言ってくれなかったのかと感じるかもしれません。先に口で伝えてあれば、文書は、金額と中身を確かめるためのものになります。

出す前に下書きで確かめること

値上げの文書を出す予定があれば、下書きを開いて、次のところを見てみてください。

  1. 最初の一文に、いつからと、いくらが入っているか。
  2. 変わらないことが、ひとつ書いてあるか。
  3. お詫びの言葉が何回出てくるか。二回以上あれば、一回まで減らす。

値上げをすれば、取引を見直す会社も出てくると思います。それでも文書は、これからも続けてくれる取引先に向けて書くほうが、言葉が落ち着くと思います。

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