こんにちは、アプリコットデザインの中村です。とある住宅会社さんで半年間続けてきたブランディングのワークショップが、最終回を迎えました。目標を話し合う中で出てきたのが、一棟でも多く建てることを目標にはしたくない、という話です。
売上も利益も、もちろん要ります。そのうえで、自分たちの価値を分かってくれるお客様に、本当に届けたい家を届けたい。そう決めると、毎月見る数字も変わります。問い合わせの件数と並べて、誰から来たかを見るようになる。相談の中身を記録に残しておくと、その変化が目に見えてきます。
件数だけを追うと、何が起きるか
問い合わせを増やして契約の数を増やせば、売上は上がるかもしれません。ただ、件数の中に、価格だけで比べられる商談や、価値観の合わないお客様、本当は受けたくなかった仕事が混ざっていくと、働く人も経営者も、少しずつ疲れていきます。値引きが増え、抱える仕事も増える。その状態のまま10年、20年と続けていけるかと考えると、僕は少し違う気がしています。
母数を増やすという考え方そのものも、これからは通りにくくなっていくと思います。日本の総人口は、2020年の1億2,615万人から、2070年には8,700万人まで減る見込みです。国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」の、出生中位・死亡中位推計の数字です。家を建てる人も、ものを買う人も減っていくなかで、件数だけを追い続けるのは、だんだん難しくなっていきます。
問い合わせの記録に、三つの欄を足す
「どんな人から来たか」を感覚で話すと、担当者の印象で終わってしまいます。問い合わせの記録に、件数とは別の欄を三つ足します。スプレッドシートでも、顧客管理の仕組みでも構いません。
- 何を見て知ったか:ホームページのどのページか、施工事例か、知人の紹介か、SNSのどの投稿か。
- 最初の連絡に書かれていた言葉:要約せず、そのまま貼る。
- 価格以外で触れていたこと:考え方、つくり方、働いている人、過去の事例など。
ここからは作例です。住宅会社に、ある月、次の二つの問い合わせが来たとします。
- 「坪単価はいくらですか。何社か比べています。」
- 「ブログで、間取りより先に朝の過ごし方を聞くと書かれていたのを読みました。共働きなので、家事の順番から相談したいです。」
件数で見れば、どちらも1件です。三つの欄に書き分けると、2件目はブログを読んで会社の考え方を知ったうえで連絡をくれていて、価格より先に暮らし方の話から入っていることが分かります。
月末に読み直して、「合う相談」に印をつける
月に一度、その月の問い合わせを全部読み直して、自分たちが本当に受けたい相談に印をつけます。残しておく数字は二つです。
- 問い合わせの件数
- そのうち印をつけた件数と、その割合
件数が横ばいでも、印のついた相談の割合が上がっていれば、発信が合う人に届き始めている、ひとつのしるしだと思います。件数が増えて割合が下がっているなら、集め方が広がりすぎているのかもしれません。
印のついた相談について「何を見て知ったか」を並べると、どの発信が合う人を連れてきたかも見えてきます。
魅力を出す、五つの角度
合う相談を増やすためにできることは、その会社の魅力を、いろんな角度から外に出すことです。角度は、たとえば次の五つです。
- 何が得意なのか
- なぜその仕事をしているのか
- どんな考え方で仕事をしているのか
- 何を大切にしているのか
- どんな人たちが働いているのか
印のついた相談が「価格以外で触れていたこと」を、この五つに当ててみます。触れられている角度は、すでに届いている角度です。一度も触れられていない角度があれば、次の発信で足します。
別の業種で当ててみる:印刷会社
もうひとつ作例です。地域の印刷会社に、次の二つの問い合わせが来たとします。
- 「チラシ1,000部を、いちばん安い紙で、明後日までにお願いできますか。」
- 「会社案内をつくり直したいです。紙見本を並べた投稿を見て、手に取ったときの感じから相談したくなりました。」
前の相談を断る必要はありません。ただ、紙選びから一緒に考える仕事が自分たちの得意だと決めているなら、印をつけるのは後の相談です。印をつけた相談が紙見本の投稿から来ていると分かれば、「何が得意なのか」の角度は、もう届いています。次の発信では、まだ出していない「なぜその仕事をしているのか」や「どんな人たちが働いているのか」を足してみます。
手元の記録で試すなら
- 問い合わせの記録に「何を見て知ったか」「最初の連絡の言葉」「価格以外で触れていたこと」の三つの欄を足す。
- 月末に、その月の問い合わせを全部読み直し、本当に受けたい相談に印をつける。
- 問い合わせの件数と並べて、印のついた相談の件数と割合を毎月残す。
- 印のついた相談が触れていた角度を五つの中から拾い、まだ出していない角度を次の発信で足す。
何件来たかと並べて、どんな相談が来たかを見ていく。自分たちに合うお客様が増えることも、会社が育っていくひとつの形だと思っています。
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