こんにちは、アプリコットデザインの中村です。お客様のサイトを見ていて、頼まれていないところが気になることがあります。トップページの手直しを頼まれているのに、先に別のページを直したほうがいいと思う。ご相談としていただいた内容より、もっと手前に原因がありそうだと感じる。デザインの仕事をしていると、月に何度かこういう場面が来ます。
口に出すかどうかで、一瞬止まります。頼まれた範囲の外なので、仕事を取りにきた人に見えないか。余計なお世話に受け取られないか。そういう計算が、頭のどこかで動きます。以前はこの迷いのほうが勝って、口に出さないまま終わったことが何度かあります。
判断を代わりにしないことと材料を出さないこと
うちには、判断を代わりにしない、という考え方があります。答えを出して差し上げるかわりに、お客様がご自分で決められる状態をつくる。そこを会社として大事にしてきました。
この考え方があるので、気づいたことを言うのは逆方向ではないか、と長く思っていました。黙っているほうが会社の考えに近い気さえしていたんです。
ここは、あとから整理し直しました。代わりに決めるというのは、こちらが答えを出して、そこへ連れていくことです。気づいたことを伝えるのは、決めるための材料をひとつ机に置くだけのことです。置いたあとにどうするかは、お客様が決めます。
黙っていると、お客様はその材料があること自体をご存じないまま決めることになります。選べるものが減っている状態なのかなと思います。判断を代わりにしないことと、材料を出さないことは、まったく別のものでした。
伝える順番を先に決めておく
今は、気づいたことは言葉にしてお渡ししています。気になっているのはここです、そう考える理由はこうです。そこまでをお伝えして、あとはお任せしますと添えます。
伝えるところまでがこちらの仕事で、決めるところはお客様の仕事です。この二つの順番は入れ替えないようにしています。順番さえ動かさなければ、引きすぎることも押しすぎることも起きないのかなと思います。
この順番は、僕の頭の中だけに置かないようにしています。うちのメンバーにも同じ形で渡しています。気づいたら言葉にする。やるかどうかはお客様が決める。この二段に分けておくと、担当が誰でも同じ形になります。
ここからは作例です。社員が十数人の工務店で、現場監督がお客様のお宅にうかがったとします。いま頼まれている工事より先に、手を入れたほうがいい箇所に気づいた。頼まれた範囲の外なので、口にするかどうかで迷う。ここで社内の決めごとが二段になっていれば、迷う場所は減ります。気づいたことはその場でお伝えする。やるかどうかは、お客様に決めていただく。
決めごとが無いと、判断は担当ごとにばらけていきます。言う人は毎回言い、言わない人は毎回黙る。お客様から見ると、同じ会社なのに、人によって出てくる情報の量が違うことになってしまいます。
一度言ったら引く
営業と混ざらないように、線を一本引いています。同じことを二度は言わない、という線です。
見送ります、というお返事をいただいたら、その話はそこで閉じます。日をあらためて持ち出したり、角度を変えて説得を続けたりはしません。続けた時点で、お客様のための話ではなく、こちらの数字をつくるための話に変わってしまうので。一度でお伝えできなかったなら、そのときではなかったということなのかなと思っています。
伝えることと、押し続けること。似ているようで、まったく別のものだと思っています。
断られたあとの気持ちを見る
自分がどちらをやっていたかは、あとで分かります。見送りますと言われた直後に、自分の中が軽くなっているか、重くなっているか。そこを見るだけです。
お客様のために言っていたなら、通らなくても、お伝えできてよかったと思えます。数字が欲しくて言っていたなら、もったいない、という気持ちのほうが先に立ちます。どちらだったかは、自分にはすぐ分かります。
黙っていた頃のことを、今は遠慮だったとは思っていません。悪く思われたくなかった、それだけのことでした。お客様のためというより、自分の立場を守るための沈黙です。会社の決めごとにしたのは、この沈黙が、心がけの範囲では無くならなかったからです。
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