こんにちは、アプリコットデザインの中村です。今回は、いい商品なのに売れないときに、機能や値段に手を入れる前に見直せるところの話です。自社の商品やサービスを持っている経営者の方、その伝え方を任されている広報やマーケティングの方に向けて書いています。
見直すところは、名前、写真と箱、説明の言葉、伝える順番、比べられる基準の五つです。
ひとつめ、名前を見て何がいいのか分かるか
ネピアの鼻セレブは、1996年に「ネピア モイスチャーティシュ」として出た保湿ティシュが前身です。使い心地は好評だったのに、広がりませんでした。保湿ティシュというもの自体が知られていなかったころで、ウエットティシュのつもりで買った人から、濡れていないという問い合わせも届いていたそうです。
2004年に名前が「鼻セレブ」に変わります。鼻に使う、高級なティシュ。何に使う、どんな紙なのかが、名前だけで分かるようになりました。日本ネーミング大賞2020で大賞に選ばれたときの紹介によると、発売翌年の2005年以降に扱う店舗が一気に増え、その時点で売上は前身の10倍を超えていました。
確かめること:名前だけを見た人が、何に使うものか、どこがいいものかを言えるか。
二つめ、並んだときに写真と箱で見分けがつくか
鼻セレブは名前と一緒に、箱も変えています。ウサギやアザラシ、ヤギといった、白くてふわふわした動物の写真です。やわらかい紙だということを、棚の前で説明なしに分からせています。
明治のザ・チョコレートは、2016年9月に箱を大きく変えました。クラフト紙のような茶色い箱で、真ん中にカカオの実。100円前後の板チョコが並ぶ棚の中で、ひと目で別のものに見えます。このとき、スティック7本入りだった形も板3枚入りになり、味も新しい4種類に入れ替わっています。
確かめること:似た商品と一緒に並べたとき、遠目で自社のものが分かるか。写真や箱が、名前と同じことを言っているか。
三つめ、説明の言葉が競合と同じになっていないか
ザ・チョコレートは、箱と一緒に味の伝え方も変えています。味の名前は「華やかな果実味」「力強い深み」のように、どんな味わいかを伝える言葉になりました。板チョコを、カカオの違いで選ぶものとして見せ直しました。
値段は220円前後で、100円前後の板チョコと比べれば倍以上です。それでも、この箱になってからの7か月で売れた数は2,000万個超。販売計画の倍を上回るペースだったと、2017年のPRESIDENT Onlineにあります。値段を下げたのではありません。選ぶ理由のほうを書き足しました。
確かめること:説明に使っている言葉を、同じ棚に並ぶ競合の説明と並べてみる。濃厚、こだわり、上質、のような言葉が、どちらにも同じように載っていないか。
四つめ、何を先に伝えているか
同じ中身でも、どこから話すかで受け取られ方が変わります。値段と量から始めると、読む人は値段と量で比べ始めます。どんな場面で使うものか、から始めると、自分が使う場面と比べてくれる。
確かめること:商品ページや売り場の札で、一番上に来ている一文は何か。それは値段と量の話になっていないか。
五つめ、何と比べられているか
日清食品のカレーメシは、2013年に「日清カップカレーライス」として出ました。味の評価は高かったのに、カレーとライスが最初から混ざっているものはカレーライスとは言えない、という声が寄せられます。カレーライスと比べられているあいだは、混ざっていることが欠点になっていました。
半年後の2014年に、名前は「カレーメシ」に変わります。打ち出したのは「ルゥでもレトルトでもない『第3のカレー』」。比べられる相手をカレーライスから外したことで、混ざっていることが、この商品の個性に変わりました。2016年には作り方もお湯を注ぐだけになり、年間の売上は2倍に伸びたと、日清食品の担当者が振り返っています。
確かめること:お客様が、自社の商品を何と比べて選んでいるか。その比べ方のままで、自社の良さは勝てる側に入っているか。
作例:味噌蔵の生みそを頭から直す
ここからは作例です。地方の小さな味噌蔵が、火を入れていない生みそを、1キロ1,280円で売っているとします。名前は「天然醸造 生みそ」。売り場はスーパーの味噌の棚で、隣には400円台の大きな袋が並んでいます。
この並び方だと、お客様が見るのは値段とグラム数です。1,280円は、ただ高い味噌に見えます。
そこで何年か買い続けてくれている方に、ほかの味噌ではなくこれを買う理由を聞いてみます。返ってきた答えが、冷蔵庫に入れておくと、夏と冬で色と味が少しずつ変わっていくのが楽しい、だったとします。火を入れていないので、家に帰ってからも熟成が進む。作っている側には当たり前のことですが、ここに良さがあります。
五つを順に当てていくと、こうなります。
- 名前:「天然醸造 生みそ」の横に、「冷蔵庫で育つみそ」とひとこと足す。
- 写真と箱:蔵の樽の写真ではなく、買った日と三か月後の、同じみその色を並べた写真にする。
- 説明の言葉:こだわりの天然醸造、ではなく、火を入れていないので、家の冷蔵庫の中でも熟成が進みます、と書く。
- 伝える順番:1キロ1,280円は消さずに、この一文の下に置く。
- 比べられる基準:味噌の棚だけでなく、ぬか床や自家製の保存食と並ぶ場所、贈りものの棚にも置けないか、お店に相談する。
みその中身には、ひとつも手を入れていません。
手元の商品でやってみる
- 売れてほしい商品を、ひとつ選ぶ。
- 名前と写真だけを社外の三人に見せて、何の商品で、どこがいいと思うかを聞く。答えは言い換えずに書き留める。
- 作っている側が考えている良さを一文で書き、2の答えと並べる。ずれていたら、名前と写真から直す。
- 実際に並ぶ棚、ネットなら検索結果の一覧を見て、隣に来る商品を三つ書き出す。その三つと並んだときに選ぶ理由が見えるかを確かめる。見えなければ、比べられる相手を変えられないかを考える。
- 機能を足すか、値段を下げるかは、ここまで終えてから考える。
三人に名前と写真を見せるのは、半日もあればできます。鼻セレブが名前と箱から見直したように、最初に動かすのは、商品の外側からで間に合うことが多いと思っています。
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