こんにちは、アプリコットデザインの中村です。今日は、ブランディングの最初の打ち合わせでいつも起きることの話です。
先に言ってしまうと、うちらしさは、考えても出てきません。これまで選んできたことを並べると、あとから見えてきます。
「御社らしさは何ですか」で、手が止まる
ブランディングのご依頼をいただいて、最初にお会いしたときのことです。御社らしさはどこにありますか、とうかがうと、たいてい少しの間があきます。
そのあとに出てくるのは、丁寧にやっています、お客様を大事にしています、社員の仲がいいです、あたりです。嘘ではないと思います。ただ、同じことは同業のほとんどが言えます。
これは、答える人が自社を分かっていないからではありません。らしさというものが、頭の中に完成品として置いてあるわけではないからだと思っています。
らしさは、選んだあとに付く名前
会社にも、その時々の選択があります。この仕事は受ける、この仕事は受けない。この人と組む、この案件は断る。値段を下げる、下げない。納期を優先する、中身を優先する。
一つひとつは、そのときに必要だっただけの判断です。理念から降りてきたわけでもありません。ただ、それが何年も積み重なると、傾きが出ます。だいたい同じ側を選んでいる、ということが起きます。
その傾きに、あとから名前を付けたものが、らしさなのだと思います。先に答えがあって、それに沿って選んできたのではありません。順番が逆です。
だから、考えて出てこないのは当たり前です。まだ名前が付いていないだけで、傾きのほうはもう出ています。
聞き方を、過去の判断に変える
そこで、うかがい方を変えるようにしました。らしさを聞くのをやめて、こう聞きます。
この3年で、迷ったうえで決めたことを5つ挙げてください。
大きな話でなくて構いません。値上げを決めた、この設備を入れた、この人を採った、この取引をやめた、支店を出さないことにした。そのくらいの粒でお願いしています。
ここは、たいてい詰まりません。実際にあったことなので、思い出せます。らしさのほうは思い出せませんが、決めたことなら思い出せる。不思議なもので、ここはどの会社でも同じです。
理由を、一行ずつ書いていく
5つ出たら、その横に理由を書いてもらいます。なぜそちらを選んだのか、を一行だけです。
ここが本番です。値上げを決めたのは、安く受けて手が回らなくなった年があったから。この人を採ったのは、経歴より、話していて質問が多かったから。支店を出さないのは、目の届かないところで自社の名前が使われるのが嫌だったから。
5つぶん並べると、たいてい同じ言葉が2回か3回出てきます。手が届く範囲、とか、目で見て決める、とか、急がない、とか。会社ごとに違う言葉です。
それが、その会社の傾きなのだと思います。ここまで来ると、あとは書けます。
途中で変わっていても、問題はない
並べてみると、昔と今で言っていることが変わっている会社もあります。創業のころは何でも受けていた、今は選んでいる、というような。
これを、軸がぶれていた期間だと考える方が多いのですが、僕はそう思いません。変わったことも、選択のひとつです。何があって変えたのかまで書けると、むしろ強い材料になります。
一度も変わっていない会社のほうが、たぶん少ないです。変わらなかったことだけを集めようとすると、書けることがどんどん減っていきます。
思い出せないときの、もうひとつの聞き方
決めたことが出てこない、という場合もあります。そのときは、こう聞きます。
受けたけれど、うまくいかなかった仕事はありますか。
これは、なぜかすぐ出てきます。そして、なぜうまくいかなかったかを話しているうちに、その会社が何を大事にしているかが出ます。合わなかった、という感覚は、大事にしているものがあるから生まれるものなので。
今日、手元でできること
会社紹介の文章を書き直す前に、紙を一枚だけ用意していただくといいと思います。
この3年で決めたことを5つ書いて、その横に理由を一行ずつ足す。それだけです。うまく書こうとしなくて構いません。
らしさは、探しに行くと見つかりません。もう選んできたものの中にあって、名前が付いていないだけです。名前を付ける作業は、僕らも一緒にやれます。
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