UPDATE:2024.11.14
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ブランディングとは何か?価値観の変遷からブランディングの未来について考察してみた
Contents
今回は、ブランディングに対する価値観の変遷から、SNS時代やテクノロジーの進化によって変化したブランディングのポイント、そしてブランディングの未来について、ブランディングディレクターの萩原さんに考察していただきました。
「ただ識別できればいい」からはじまったブランディング
Q.ブランディングの変遷と時代ごとに担ってきた役割を教えてください。社会の動きに応じて世の中のニーズや価値観が変化するのと同様に、ブランディングの役割も時代と共に変わってきました。
ブランディングの語源をたどると、もともとは牛に焼印を押して生産者を識別することから始まりました。当時は「売るため」という概念はなく、単に牛を識別するためだけでよかったのです。
その後、識別することの価値がビジネスに応用されるようになり、「選ばれる理由づくり」や「売れ続ける仕組みづくり」として説明されるようになり、さらに近年では、ブランドのストーリーやスタンス、社会的責任、存在意義などの要素がますます重要視されるようになりました。
ブランディングを推進するための主な要素には、次の4つがあります。
1 品質 → 目的:機能的価値による安心感
2 認知/識別 → 目的:記憶に残り、第一想起されること
3 スタイル → 目的:付加価値を与え、憧れを喚起すること
4 スタンス → 目的:共感や応援、熱狂を生み主体的な参加を促すこと
これらの構成要素の比重が、社会のニーズや価値観の流れによって変化してきています。
なお、品質については、どの時代においても最低限担保しなければいけない機能的価値のため以下の解説では割愛させていただきます。
認知重視の時代
日本が高度成長していた数十年前は、認知重視の時代でした。
知っていることが信頼に繋がり、購買に影響を与えていたため、「名前を知っている」「聞いたことがある」という状態を作るだけで十分でした。
また当時は、情報を発信できる媒体が限られていて、情報を受け取る人はテレビや新聞、ラジオから情報を取得していました。だから当時のブランディングの手法としては、認知目的の「マス広告」がメインで、しかもどれも莫大な予算がかかっていた。なので、資本力のある大企業がブランディングにおいても大きな力を持っていた時代と言えます。
これは僕の持論ですが、この時代のブランディングはマーケティング的な側面が強く、主な目的は売ることでした。もちろん、スタイル性も求められていましたが、知名度の方が大きな価値を持っていました。
スタイル重視の時代
次に訪れたのが、スタイル重視の時代です。
高級ブランドがその代表例で、デザインによる付加価値を提供し、それを身につけたいという憧れを訴求しました。「かっこいい!」「おしゃれ!」といった感情的な訴求が強く影響する時代で、スタイル的な共感やステータスを付与する情緒的な価値が中心でした。
スタンス重視の時代
そして、現在はスタンス重視の時代。
ブランドが貫く姿勢に対して、顧客が共感、応援、信頼などの感情を抱くことで、強い繋がりをもつことができます。現在のブランディングは、ファンづくりと言っても過言ではありません。ブランドは、顧客と共に目指す世界観を共有し、その実現に向けて一緒に動いてくれるファンをつくることが求められています。
さらに昨今はテクノロジーの進化により、見た目の良い販促物を簡単に作ることができるようになりました。そのため、ブランドの「中身」、つまりスタンスやストーリーがますます重要になっています。
ブランディング会社ごとに異なるブランディングの定義
Q.なぜブランディング会社ごとにブランディングの定義が異なるのでしょうか?
確かに、ブランディングを「コミュニティづくり」「愛されづくり」「イメージづくり」「ファンづくり」と表現するなどブランディング会社によってブランディングの定義はさまざまですよね。
これはおそらく、その会社がブランディングの「認知・スタイル・スタンス」の、どの役割を主に担っているかによって異なるのだと思います。各会社の強みがその会社の独自性となり、それがブランディングの定義に反映されているのです。
たとえば、デザインに強みがある会社はスタイル的な部分の重要性を強調するかもしれないし、組織づくりやPR戦略に強みがある会社はコミュニティ形成に関連した言葉を打ち出すといったように。
ただし、ブランディングの本質である、「感情で繋がること」「他と識別されること」はどの会社においても共通しています。
各ブランディング会社が持つ独自の強みと掛け合わせた結果、それぞれの言い回しが異なるため、少しわかりにくいと感じるのかもしれませんね。
しかし「イメージづくり」は、ブランディング活動の一部にはなりますが、ブランディングそのものを完全に表すものではないと感じます。ブランディング活動はより広範で、単にイメージをつくるだけでないためです。
リアルなコミュニケーションが再評価されている
Q.SNS時代やテクノロジーの進化によって変化したブランディングを推進する上でのポイントはありますか?コミュニケーションのあり方自体が変化しましたよね。
昔は一方通行の情報発信が主流でした。テレビ広告やブログ、オウンドメディアなど、企業が発信し消費者が受け取るという構造です。
しかし、SNSの登場により双方向のコミュニケーションが可能になり、消費者とのやり取りがダイレクトに行えるようになりました。
さらに、コロナ禍を経てデジタル化が急速に進んだことで、回り回ってリアルな体験の価値が再評価されています。
デジタルだけでなく、一対一のコミュニケーションがとれるリアルな場でファンと直接対話する機会が持てるブランドは顧客との感情的な繋がりが深まるため、今後さらに強くなっていくと感じますね。
もちろん、SNSを活用するなどオフラインの重要性も変わりません。ようは、これも比率やバランスの話だと思います。
Webがで始めた頃は、「デジタルでどうブランディングを行うか?」が議論され、すべてがオンライン中心でしたが、今ではオンラインとオフラインの両方に注力する必要があります。
特に、オフライン、オンラインを通して、ブランドと顧客が各タッチポイントで関係性を育みつつ、一緒に価値を共創する時代になっています。
結局のところ、ブランドの成長は、顧客とともにブランドのストーリーを動かしながら社会とどのように繋がり、価値を共創していくかにかかっています。
ブランディングの未来
Q.これからのブランディングの役割はどのように変化していくと思いますか?
僕なりの解釈となりますが、「仲間づくり」や「身内づくり」という考え方の重要性も増してくると思います。ブランドが単に商品やサービスを提供するだけでなく、「この課題に対して自社はこう解決したいから私たちが存在するんだ」という明確な使命やビジョンを持ったブランドは、顧客やスタッフの垣根を超え、共創するようになり強い絆で結ばれたブランドに成長していくと思います。
また、そうして仲間になってくれた方に対する「活動の細かな共有」や「役割づくり」も鍵になると思っています。
ビジョンに向かうためのすべての役割を企業内に属する人が担うのではなく、状況において何がベストかを優先し、ブランドに関わる一人ひとりが活きる場所(役割)を作ることが求められると思います。
そうなると、今後は競合同士が手を組むケースも増えてくるかもしれません。
お互いの強みや独自性を尊重し、それらを掛け合わせて新しい価値を創り出し、業界をともに盛り上げていく取り組みが加速するのではないでしょうか。
今後は、共存共栄もブランディングの未来における大きなテーマになっていくと考えています。
最後に
最後に、このブランディングの定義を整理した記事は、自社のブランディング課題を洗い出す際にも役立つはずです。これまでの流れでお伝えした内容は、あくまでブランディングに対する価値観の変遷を振り返ったものであり、「今はもう〇〇は重要ではない」と明確に線引きするものではありません。やはりバランスが大切です。
認知されなければ購買には結びつかず、スタンスが明確でなければファンづくりも困難です。
ですから、今自社のブランドがどこに課題を抱え、どんなアプローチを優先すべきかを明確にするための一つのフレームとしてご活用いただければと思います。