UPDATE:2024.7.23
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【ブランディングの専門家に聞く】ブランドを作るためのクリエイティブ制作に必要なこと《前編》
近年、競争が激化している市場や世の中の価値観の変化に伴い、企業やサービス、商品は、独自性や価値を見出し、唯一無二の存在として選ばれ続けるために、ブランディングに沿った経営が求められています。また、ブランディング戦略に基づいたクリエイティブ制作ができるクリエイターの存在もますます重要になっています。そこで今回は、アプリコットデザインでブランディングディレクターをつとめる萩原さんに、ブランディングの考え方を取り入れることで、クライアントの課題をどのように理解し、解決に導くことができるのか、クリエイティブにブランディングを取り入れるためのステップなどについてお話を伺いました。
今後、ブランディングを自身の制作に取り入れたいと考えているクリエイターさんにとって、参考になれば幸いです。
ブランドの居場所や輝く場所をクリエイティブの力で後押しする
ー クリエイティブ制作において、ブランディングの思考を取り入れることの重要性について教えてください。
弊社では、“デザイン”の定義を課題解決の道筋を設計することと考えています。
そのため、ブランディングの考え方を制作に取り入れることで、お客様の課題をより深く理解することができ、成果につながるアウトプットが可能になると考えています。
それは、ブランディングを進める過程で本質的な課題を捉え、課題を解決するためのさまざまな戦略を立案し、その戦略に基づいたクリエイティブ制作ができるからです。
また、ブランドの本質をターゲットに対して視覚的に伝えるクリエイティブを“ブランディングデザイン”と呼び、社会との関係性から浮かび上がるブランドの独自性や在り方・在りたい姿を可視化することができます。
これはブランドのポジショニング戦略にもつながり、ブランドの居場所や輝く場所をクリエイティブの力で後押しし、世の中に伝わりやすい形で表現できます。
ー 実際に、クリエイティブにブランディングの要素を落とし込む際のステップを教えてください。
ブランディングを行う際には、まずブランドの考え方を理解する必要がありますが、落とし込み方としては、以下の3つのステップがあります。
(2)型に落とし込む
(3)形に現して可視化する
まず、“(1)思考の軸をつくる”では、お客様の顧客の視点に立ち、ブランドが存在する社会的意義・強み・特徴・顧客のニーズなどそれぞれの本質をしっかり捉えて、編集していきます。
“(2)型に落とし込む”では、ブランディングは一貫性が求められるため、ブランドの方針やルールに則ってクリエイティブをつくることで、消費者にイメージを浸透させます。
(1)と(2)をアウトプットで表現するのが、“(3)形に現して可視化する”です。
これからのクリエイターにとって必要な“編集力”
ー “(1)思考の軸をつくる”の“編集”についてもう少し詳しく教えてください。
僕は、これからのクリエイターにとって“編集力”が必要不可欠だと考えています。
ブランディングは単なるものづくりではなく、ものづくりも含めた“ものがたりづくり”。
ものがたりを作るためには編集力が必要であり、クリエイターはその視点をクリエイティブに活かしていくことが求められています。
編集を行う際のポイントは3つあります。
(2)要素を分解し価値を具体的に捉えること
(3)接続ポイントを見つけ掛け合わせること
(1)については、ブランドが生まれた意味や、身近なところでいくと「なぜこの担当者さんはこの言葉を使っているんだろう?」といった、目に見えないものへの理解が重要です。
そして、過去〜現在〜未来を繋げられるように編集をしていきます。ストーリー作り、脚本作りとも言えますね。
過去は教えを乞うためにあるので、過去ばかりを振り返っているのではなく、今後目指していかなければならない未来の姿も考えます。
抽象的な言葉でいうと希望のようなもの。
デザインをお客様にご提案すると、時折お客様が希望に満ちた表情を浮かべる瞬間があります。
「これが私たちが目指していた未来です!」というような。
ブランディングをする以前はお客様自身も未来への解像度が低いというか、まだ腹落ち出来ていない状態だったものが、デザインによって可視化されたことでお客様の中でビジョンが明確になったのだと思います。
人は、モノが目の前に現れて初めて「それがほしい!」と認識するらしいのです。
だから実際にデザインが目に映し出される前は、これが“私たちの未来”であると気付くことができない。
僕らはそこをクリエイティブの力を使ってお手伝いしているのだと思っています。
“そのブランドならでは”の独自性を尖らせる
ー “(2)要素を分解し価値を具体的に捉えること”について詳しく教えてください。
これは、重なっている“よくわからないこと”を分けて考えるということです。
例えば、とあるカフェの強みが「新鮮なコーヒーを飲める体験価値の高さ」である場合、「新鮮」という言葉は分けることができます。
「何が新鮮なのか?焙煎したてだから?店舗に保管している期間が短いから?」
どちらのことを指しているかで強みが変わってくるため、ざっくりとした強みや抽象的な言葉をより具体的にし、ブランドの強みを明確にしていきます。
ー “(3)接続ポイントを見つけ掛け合わせること”について教えてください。
どんなに相反することでも、接点や繋がるポイントは必ずあります。
ブランドの社会的意義や歴史、顧客のニーズ、要素分解した具体的な強みを全て繋げて、まとめる。
そしてさらに深掘りすることで、“そのブランドならでは”の独自性を尖らせることができます。
むしろ一見接続できなさそうな要素を接続できた時の方が面白いものが出来上がることもあります。
このように、”思考の軸をつくる編集”というのは、ブランドをあらゆる角度から捉え直し、それぞれのポイントを組み合わせて「誰に何を伝えるか」を明らかにすること。つまりコンセプトメイクそのものです。
後半につづく >>
(執筆:広報はち)