こんにちは、アプリコットデザインの中村です。今日は、会社のタグラインをどうやって決めていくかを書きます。
タグラインは、会社やブランドが何のためにあるのかを、短い一言にしたものです。たとえば、サントリーの「水と生きる」、ニトリの「お、ねだん以上。」、タワーレコードの「NO MUSIC, NO LIFE.」。どれも商品の説明をしていません。その会社が何を大事にしているかを、短いまま言い切っています。
自社でも作りたい、というご相談をいただきます。そのとき多いのが、会議室に集まって、いまは社内のどこにも無い言葉を探し始める形です。案はいくつも出るのに、どれもしっくりこないまま日が暮れます。探す場所を、外から社内へ移すと動き始めます。
他社と違うところはもう社内にある
他社と違うところは、たいていもう社内にあります。ただ、長く続けていることほど当たり前になって、価値として見えなくなります。得意なことほど、これくらいどこでもやっているだろう、と思ってしまう。だから、御社の強みは何ですかと伺っても、すぐには出てきません。
周りと比べ始めると、さらに見えにくくなります。もっと大きな会社がある。もっと実績のある会社がある。そう考えているうちに、いま社内にあるものが薄く見えてきます。
材料を集める五つの手がかり
タグラインの案を出す前に、材料を集めます。社内から集めるときの手がかりは、この五つがいいと思います。
- ずっと続けてきたこと:誰も指示していないのに、何年も続いている仕事のやりかたがあります。
- 当たり前にできていること:新しく入った人が驚くのに、長くいる人は驚きません。
- 無意識に大切にしていること:忙しい月でも省いていない手順。ここに会社の性格が出ると思っています。
- お客様からよく褒められること:打ち合わせや納品のときに、実際に言われた言葉を思い出します。
- なぜか自分たちだけが気になること:同業者は気にしていないのに、自分たちの会社では毎回出てきます。
どれも、もう起きたことを思い出す質問です。
集め方も先に決めておきたいところです。役員だけで話すと会社の看板に寄りやすいので、全員に配るのがいいと思います。紙に五つの欄を作って、二十分で各欄にひとつずつ書いてもらう。書けない欄があっても、そのまま出してもらいます。
造園会社で集めてみる
ここからは作例です。社員八名の造園会社があるとします。集まった紙を並べたら、こんな言葉が出てきたとします。
- ずっと続けてきたこと:引き渡しのあと、一年目の春と秋に、頼まれなくても庭を見に行っている。
- 当たり前にできていること:図面を書く前に、朝どの窓から庭を見るかを施主さんに聞いている。
- 無意識に大切にしていること:提案のときに木を減らす。十年で混み合うのが分かっているから。
- お客様からよく褒められること:「ここの庭は、手がかからない」。
- なぜか自分たちだけが気になること:工事中、近所の方が通る道に泥を残していないか。
並べてみると、同じほうを向いた言葉が混ざっています。一年目の点検。十年を見て木を減らす。手がかからない。この会社が見ているのは、引き渡した日の写真より、そのあとの十年だと思います。
ここまで来ると、候補が出てきます。「十年後に、いい庭。」。この一言は、引き渡しの日を一番きれいに見せる会社には書けません。
その言葉で社員が自分の仕事を説明できるか
案が出たら、決める前に確かめます。書いた一言を社員に見せて、今日やった仕事をこの言葉で説明してください、と聞いてみる。
さっきの造園会社なら、剪定に出ている人が「十年後に枝が当たらないように、今日は上を落としました」と言えます。事務の人なら「一年目の点検の案内を出しました」と言える。全員が自分の持ち場で使えるなら、その言葉は社内に根があります。
逆に社長しか説明できない言葉は、まだ会社の言葉になっていません。もう一度、集めた紙に戻ります。
決めたあと、どこで使うか
決まったら、使う場所まで先に決めます。どこで使うかが決まっていると、言葉は生きたまま残ると思います。
- 会社案内と、ホームページの一番上に置きます。
- 採用ページの最初の一文にも入れます。何を大事にしている会社かが、応募の前に伝わると思います。
- 見積の説明にも使えます。なぜこの工程が入っているのかを、この言葉から話します。
手元で始めるなら
- 五つの手がかりを書いた紙を用意して、全員に配る。二十分で、各欄にひとつずつ書いてもらう。
- 集めた紙を欄ごとに並べ、二人以上が書いたものに印をつける。
- 印のついたものだけを見て、同じほうを向いているものを四つか五つ残す。
- 残った言葉から一言を作り、社員に見せて、自分の今日の仕事を説明してもらう。
新しい言葉を探していた時間を、いま社内にあることを書き出す時間に替える。タグラインは、そのあとで決まります。
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