こんにちは、アプリコットデザインの中村です。今日は、自分たちが売っているものは何なのか、という話です。
先に結論を書きます。会社の提供価値を「つくること」で説明していると、これから説明が届かなくなります。つくること自体は、AIによって速く、安くなっていくからです。
ここ数か月のAIの進み方を見ていて、その感覚が強くなりました。制作の工程そのものが、これまでとは違う速さで進むようになっています。
事業内容は手段の名前でしかない
ホームページや会社案内に、事業内容が並んでいます。デザイン制作、ホームページ制作、撮影、印刷。どれも間違いではありません。ただそこに書いてあるのは手段の名前で、お客様が受け取っているものとは別のことが多いです。
うちの工程を、順番に並べてみます。
最初にやるのは、社内でばらばらに言われていることの棚卸しです。次に、その中から他社と重ならない部分を選び出す。選んだものを、社外の人に通じる言葉に置き換える。誰に、どの順番で伝えるかを決める。ここまで済んでから、ようやく手を動かします。
手を動かすのは、いつも最後です。かかっている時間でいえば、その手前のほうがずっと長い。お客様がつまずいていたのも、たいていそちら側でした。それなのに、自分たちの説明は制作物の名前から始めていた。売っているものと、掲げているものがずれていたんだと思います。
これは業種を問わず起きます。自社の事業内容に並べてある言葉と、お客様が「助かった」と感じている中身。この二つを横に並べてみると、たいていずれています。看板に書いてある仕事の名前は、提供している価値の名前ではありません。
横に移る前に下へ潜る
AIで仕事が変わるという話になると、事業を変える、新しい分野に移る、という方向に行きがちです。ジョブチェンジですね。それが要る場面もあると思います。
ただ、その手前にできることがあります。今の仕事にもっと深く潜って、自分たちの本当の価値を探すことです。仕事を変えるのではなく、仕事の奥へ潜る。ジョブダイブと呼んでみます。
潜るときに使っている問いは、だいたい次の四つです。お客様は、なぜうちに頼んでくれているのか。うちがいなくなったとき、その会社は何に困るのか。自分たちは何をつくっているのではなく、何を解決しているのか。その結果、お客様にどんな変化が起きているのか。
ブランディングのご相談でも、近いことを最初にお聞きします。答えは会社ごとにまるで違って、同じ業種でも重なりません。整体院なら、体をほぐす時間を売っているのか、それとも、自分の体の状態を説明してもらえる時間を売っているのか。どちらなのかで、値段の付け方も、伝え方も変わります。
価値が言えると金額の説明が変わる
この掘り下げは、実務にそのまま返ってきます。分かりやすいのが、お見積りの場面です。
制作物の名前と単価で組んだ見積は、他社のものと横に並びます。並んだ時点で、お客様が比べられるのは金額だけです。安いほうを選ぶのは当然で、そこで値引きに入ると、次からその金額が基準になってしまいます。
お客様に起きる変化のほうで説明できると、比べる相手がいなくなります。社内で意見が割れていたところに一本の軸が通る。営業の人が同じ言葉で話せるようになる。求人に応募してくる人の質が変わる。そこにいくら払うか、という話になると、金額の意味が変わります。
ここで詰まる会社は、たいてい安売りをしているわけではありません。自分たちが渡しているものを、まだ言葉にできていないだけだと思っています。
つくれる会社から決められる会社へ
これまでは、つくれること自体が商品でした。デザインソフトが使える。文章が書ける。コードが書ける。技術を持っていれば仕事になった。
これからは、そこだけでは差がつきにくくなると思います。代わりに大きくなるのは、何をつくるべきかを決められること。そしてその判断を、お客様に説明できることです。
作業する会社より、判断できる会社。そちらの価値が上がっていく気がしています。
うちも、社内で自分たちの提供価値を書き直しているところです。制作物の名前を消して、お客様に起きた変化のほうで書いてみる。やってみると、書けるところと書けないところがはっきり出ます。書けないところが、たぶんこれから掘る場所なんだと思います。
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