UPDATE:2021.3.1
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何年経っても、いいモノはいい。
今でこそwebデザインも少々かじっておりますが私のデザイナー人生は「本」から始まりました。
東京は印刷のメッカにあった雑誌・書籍のデザイン会社には
10年間勤務しました。
特に本が大好きだった訳ではないけれど、その会社に導かれ
どちらかと言うと読む物というより、完成された一つの製品として
いつしか本が大好きになっていました。
中でも特に大好きな出版社があり
(よく聞かれますが、デザイン会社と出版社は別モノです。)
デザインの参考に、またコレクターとして
まったく興味のない内容であったとしても
その出版社だからという理由だけで購入しては
隅々まで眺めて家の本棚に並べてウットリしていました。
(引越しのたびに増えてく本たちを持っていくので段ボールが重い重い。)
東京ビックサイトで行われていた国際ブックフェアには毎年足を運び
必ず最後にその出版社のブースに訪れ
本屋さんでは置いていないレア本を何冊か買って帰るのが定番になっていました。
デザインが好き。
ちょっとユルっとした余白のある雰囲気が好き。
どの本も内容は全然違うのに、どこか統一された空気感が好き。
こうなってくると社名のロゴすら好き。
本屋さんに行った時もずらっと並んだ本の中から
瞬時にその出版社の「ロゴ」を目に入れるのが得意でした。
そんな大好きだった出版社が
…………先日、倒産しました。
新型コロナウィルス関連による倒産のようです。
衝撃でした。
その出版社が出す本にはいつも
風通しの良い「余裕」を感じられる雰囲気が漂っていたので
もちろんそれとこれとは関係ないのですが
あまりにその本の雰囲気と「倒産」の現実が結びつかず
字面は目に入って来てるのに
状況を理解できるまでにはしばらく時間がかかりました。
余裕なんてなかったんだな。。。
だけど私は知っています。
ユルっと余裕のある雰囲気は
ほんとにユルい環境下では作り出せないということを。
緻密な計算と、高い技量と、想像を遥かに超える労力が必要だということを。
優雅に見せるためには水面下で必死でもがかないといけないことを。
(↑今年はもう北帰行した安曇野の白鳥さん。)
その出版社だけじゃなく
人気のある週刊誌ですら発売延期になる事態を引き起こしている昨今。
現に私も
パソコンにはお気に入りやブックマークされたwebサイトが日に日に増えていくのに
ここ数ヶ月、本棚の本は増えないまま。
というより最後の引っ越しから段ボールから出ていない本すらあります。
だけど、何年経ってもいいモノはいい。
webサイトだと5年前…いや1年前のデザインでも
「古っ!」という印象を受けるものもありますが
いい本には、いつ見ても色褪せない良さがあるから不思議です。
久々にダンボールを開け
またあのロゴが付いた本を隅から隅まで見返そうと思ったのでした。